【社説】南北首脳会談の高揚感に惑わされるな
 北朝鮮と韓国の指導者は27日、板門店で会談し、新たな平和の時代の幕開けを宣言した。
トランプ米大統領は「そこでは今、こうしているあいだにも、多くの素晴らしいことが起
きている」と述べた。しかし、それが真実だとすれば、それは舞台裏で起きているに違い
ない。表立った外交交渉では大きな前進が何1つなかったからだ。
 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイ
ン)大統領はハグや乾杯をしながら、両国が「朝鮮半島の非核化」を目指す共同宣言に署
名した。しかし、重要な問題は正恩氏が非核化をどう考えているかである。北朝鮮が言う
朝鮮半島の非核化提案は、譲歩とは程遠く、核開発プログラムを廃棄せよという要求に抵
抗するときに北朝鮮が使ってきた常とう手段である。米国が核保有国であり続ける限り、
自分たちも放棄しないというのが北朝鮮の言い分である。
 首脳会談後に出された共同宣言には具体的な文言がない。文大統領には非核化に向けた
意欲をより具体的に示すように正恩氏に促す機会があった。国際査察団に北朝鮮の核関連
施設への訪問を許可するといった具体的な第1歩を要請することもできただろう。文大統
領がそうした働きかけをしたという証拠はない。
 それどころか文大統領は正恩氏の言葉を額面取りに受け止め、正恩氏が誠実であると保
証してしまったようだ。何度も合意を破棄されてきた過去を踏まえると、理解し難い対応
である。韓国政府は北朝鮮の巧言だと知りながら、その意味を世界に向けて誇大宣伝する
ことを選んだのだ。
 年内に朝鮮戦争を正式に終結させる目標を含めるため、文大統領が首脳会談のテーマを
広げたことも問題だ。正恩氏はもはや韓国からの米軍撤退を要求していないが、米韓同盟
の弱体化、在韓米軍の削減といったその他の要求をする余地はまだ多く残されている。独
裁者からも平和は買うことができる。問題はそれにどれだけの対価を支払うかだ。
 今回の首脳会談には、2000年と2007年に行われた過去2回の南北首脳会談の二の舞に
なる恐れがある。
(以下略)
http://jp.wsj.com/articles/SB10920515820464333357004584191323619797070