時代の正体取材班=石橋学】人種差別・排外主義を掲げる極右政治団体「日本第一党」の桜井誠(本名・高田誠)党首が相模原市内で講演した際、
在日コリアンに危害を加えると宣言するヘイトスピーチを行った。ヘイトスピーチ解消法に違反し、
暴力を誘発しかねない重大な人権侵害発言は、来春の統一地方選で県内に擁立する公認候補を紹介する中でなされた。政治活動に名を借りた差別扇動を防ぐ手だてが求められている。
講演は3月31日、日本第一党の地方組織である神奈川県本部が主催。横浜市鶴見、保土ケ谷区、相模原市中央、南、緑区で立候補する5人の市議選候補の紹介を兼ねて開かれた。
桜井氏は日本第一党の政策のあり方を語る中で、自らの差別的言動が原因となったヘイトスピーチ規制について触れ、「シナ人、朝鮮人は日本に対してやりたい放題やっているのに、
自分たちを批判する言論を取り締まれと言う」と誹謗中傷。「ヘイトスピーチ抑止法や条例ができても、われわれが政権を取ってひっくり返せばいいだけの話。
条例と法律を作った人間を必ず木の上からぶら下げる。物理的にこれをやるべきだ」と続けた。
桜井氏の「木からぶら下げる」発言は20世紀前半の米国南部で横行した、リンチを加えて虐殺した黒人の死体を見せしめに木からつるした蛮行を想起させるおぞましいものだ
。標的とされた在日コリアンを恐怖に陥れ、殺されても構わない存在だと尊厳をおとしめ、地域で共に生きる仲間ではないとみなす。ヘイトスピーチ解消法は危害の告知、著しい侮蔑、
地域社会からの排除の扇動という3類型から不当な差別的言動を定義するが、そのいずれにも該当する違法な発言だ。
「やりたい放題」というデマで敵愾心をあおり、支持を訴える手法は「在日特権」に代表される差別扇動の常套手段。人間の存在を否定し、
平穏な地域社会を破壊する言動が政治活動であろうはずがない。
人倫にもとるだけでなく、桜井氏の発言がとりわけ許されないのは「政治」という公的な装いが差別の扇動効果を増幅させるからだ。収支報告書によると、
16年の都知事選で約2千万円の寄付金が集まった。得票数は11万4千余り。公職選挙法に演説内容を縛る規定がなく、解消法にも禁止規定がないという不備を突き
、桜井氏は選挙のたびにヘイトスピーチを繰り返す。社会的批判が高まる中、政治を装った差別扇動に差別・排外運動の生きる道と糧を見いだしている。
危害を加えると宣言する政治団体の候補者が街頭に立つ。そのことがすでに標的とされている在日コリアンに恐怖を抱かせるという実害を生んでいる。
横浜、相模原市には、ヘイトデモによる人権侵害が繰り返されてきた川崎市同様、ヘイトスピーチ規制を含む差別禁止条例を急ぎ制定する必要性と責務が生じている。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180411-00025119-kana-l14