京都府舞鶴市で開かれた大相撲の巡業で、土俵で倒れた多々見良三・舞鶴市長に心臓マッサージをしていた女性たちに、「土俵から降りてください」
と求めたアナウンスが物議を醸している。朝日新聞デジタルによると、女性は看護師だったという。
日本救急医学会の「ICLSコース」ディレクターで、昭和伊南総合病院麻酔科診療部長の大房幸浩さんは、YouTubeに投稿された動画に映った土俵上の
様子から、中心になった女性がとった初期対応を検証、自身のFacebookで公表した。
女性たちがあたった蘇生の様子について、大房さんはこう解説する。
「関係者が取り囲みながらも何もできずにいたところ(中心となって蘇生に当たった)女性Aが土俵に上がり、すぐに状況を把握し救命処置を行って
います。たぶん、市長の意識はなく、呼吸は確認できなかったか、あっても死戦期呼吸(あえぎ呼吸)だったのではないでしょうか」
「胸骨圧迫のスキル、周りへの指示の的確さから、相当トレーニングを積んだ方であると思われます。胸骨圧迫の早さや強さは完ぺきで、救急蘇生のスペシャリストと考えられます」
「特記すべきは隣の人に時間確認の指示を出している様子がうががえること。確認したのは、心肺蘇生の開始された時間だと思います。救命のポイン
トは心肺停止から蘇生開始までの時間にかかっています。できるだけ早い方が良いのですが、実際救命処置を行っても記録に残っていなければ、果た
して正しい蘇生が行われたか、後日の検証ができません。このため、蘇生の講習会では記録を残すよう指導しています。時間確認ができるのは相当冷静に対応していたと考えられます」
「AEDが到着し、女性Bに胸骨圧迫が変わりますが、ハンズオンリーCPR(人工呼吸をしない心肺蘇生)ならび胸骨圧迫交代のタイミングも文句のつけ
ようがありません。経過を追ってみると、心臓疾患による急変ではないのがうかがわれますが、初期対応としては完璧です」
朝日新聞デジタルによると、実行委員会が5日、心臓マッサージの中心になった女性に感謝状を贈りたいと連絡したが、「当たり前のことをしただけ。そっとしておいてほしい」と固辞したという。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/04/05/rescue-doctor_a_23404339/