森友文書書き換え問題、どう見る? 財務OBに聞いた

 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書が書き換えられた問題は、公文書の信頼性を大きく揺るがした。
14文書の約300カ所が意図的に改変された背景には何があったのか。財務省のOBからは指揮命令系統の中に潜む問題点を指摘する声が多く上がっている。

 「上司から『書き換えろ』と言われたら従わざるを得ない」。近畿財務局に10年以上勤めた元職員の男性は、書き換えに関わった職員の心情を推し量る。

 財務局内で決裁文書は役職のない担当職員が起案し、何人もの上役が内容を精査して仕上げる。重要な案件では、作成段階で本省の承認を得るケースもあるという。

 男性は近畿財務局の職員を「厳しい上下関係が染みついており、上層部の命令には極めて従順な体質」と評する。

 書き換え前の文書には複数の政治家秘書からの問い合わせや安倍昭恵・首相夫人に関する詳細な経緯の記述があった。
男性は「本省とやりとりする中で詳しい経緯を書くこともある」と指摘。「スムーズに決裁を進めるためには記述が必要だったのだろう」とみる。

 「開示されれば国会で追及される材料になり、省内の業務が増える。そうした事態を避けるという“省益”のためではないか」と削除された理由を推測。
「でも通常ではあり得ない。書き換えの指示は本省の上層部から出たはずだ」と話した。

 地方財務局の立場の弱さが遠因とみる意見もある。北陸財務局理財部の元男性職員(55)は
「職員は地方単位のブロック採用で、地元業者との交渉を担うことも多い。現場から遠い本省のキャリア職員や政治家との板挟みになりやすい」。

 在職当時、地元の有力政治家の秘書から便宜を求められたり、圧力をかけられたりした経験もある。
「それでも規則を超えた対応は一切できないのが公務員。よほどのことがあったとしか思えない」とおもんぱかった。

 書き換えは佐川宣寿・前国税庁長官の国会答弁に沿うよう行われたとみられている。
「もし上層部が書き換えを指示したとしても『書き換えろ』ではなく『整合性を取れ』と言うだけ。現場に押しつけたのかもしれない」と話した。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28115000U8A310C1CC1000/