通常兵器に核で反撃 米が核戦略指針、新型開発明記

【ワシントン=永沢毅】トランプ米政権は2日、今後5〜10年間の米国の核戦略の指針となる「核体制の見直し(NPR)」を
発表した。核攻撃への抑止と反撃に限らず、通常兵器への反撃にも核の使用を排除しない方針を打ち出した。爆発力を
抑えた核兵器の開発方針も明記。「核なき世界」をめざして核の役割を減らそうとしたオバマ前政権の方針から転換し、
核兵器の役割を広げた。

中国、ロシアによる核兵器の近代化や北朝鮮の核開発により脅威が高まっていることに対応する。トランプ大統領は
声明で「核の役割や数を減らすこの10年にわたる米国の努力にかかわらず、他の核保有国は安保政策での核の
優位性を増してきた」と指摘。「21世紀の様々な脅威に柔軟に対処する」と表明した。

今回のNPRは、核の使用について「米国や同盟国の極めて重要な利益を守るための極限の状況に限る」と前政権の
方針を継続。ただ、その極限の状況には「国民やインフラ、核施設などへの重大で戦略的な非核攻撃」もあてはまるとし、
通常兵器の攻撃に対しても核の使用を辞さない方針を鮮明にした。

新しい指針では、新たな核開発を進めることもうたった。短期的には潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)で使う爆発力を
抑えた新たな核兵器の開発を検討。長期的には、海洋発射型の核巡航ミサイルを新規に開発する方針も盛り込んだ。

多様な核戦力を保有することで様々なケースでの使用に備え、抑止力を高める。10年のNPRでは「新たな核弾頭は
開発しない」としていた。

オバマ政権がまとめた前回の2010年のNPRでは、核拡散防止条約(NPT)を順守する非核保有国には「核兵器を
使用しない」と表明していた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2650620003022018MM0000/