安倍晋三首相は2月9日に行われる平昌冬季五輪の開会式への出席を見送る方針を固めた。

 韓国の文在寅大統領が慰安婦問題で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意をめぐり追加の措置を求めたことを受け、首相訪韓の環境が整っていないと判断した。

 菅義偉官房長官は11日の記者会見で「(対応は)決めていない。国会日程を踏まえて検討する」と従来のコメントを繰り返したが、
政府筋は首相による五輪開会式出席について「現状では難しい。お膳立てができていない」と指摘。外務省幹部は「無理だ」と明言した。

 首相の訪韓は、韓国初の冬季五輪の場で朝鮮半島の平和をアピールしようと、文氏が昨年11月の日韓首脳電話会談で要請したものだ。12月に来日した康京和外相も首相に直接招請。
首相は「国会日程などさまざまな事情を踏まえて検討する」と明確な返答を避け、韓国側の出方を見守っていた。

 しかし、韓国外務省の作業部会は昨年末、慰安婦合意を批判する報告書を発表。さらに康氏が元慰安婦向けの日本政府の拠出金10億円の位置付けを曖昧にする新方針を打ち出し、
文氏が10日の年頭会見で「心からの謝罪」を求めたことで、首相の開会式欠席はやむを得ないとの認識が政府内に広がった。

 ただ、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させる中、日本政府内では日韓関係を必要以上に悪化させるべきではないとの声も強い。このため、韓国側の出方を見極めつつ、
3月9日開幕のパラリンピックに合わせた訪韓を探っている。五輪開会式には、首相に代わる政府高官の派遣も検討する。


2018年01月11日18時58分
https://www.jiji.com/sp/article?k=2018011101066&;g=pol