中国由来の熟語に、趁火打劫(ちんかだこう)という言葉がある。意味は、敵の混乱に乗じて土地や民を奪うことである。
現代の中国では、この単語が火事場泥棒を指す言葉として、たびたびニュースなどで使われている。今回は事故に遭った
トラックが、その被害を受けてしまった。
「中財網」(11月30日付)によると、11月28日午後、浙江省温州市内の高速道路を走っていたトラックの後輪部分から
火災が発生し、小規模の爆発を起こした。この爆発の影響で、積み荷の一部が高速道路の下に落下した。
本来なら、トラック運転手の安否や爆発の影響などが気になるところだが、近隣住民にとっては積み荷にしか興味がなかった
ようだ。このトラックには1万4,000足のアディダスのシューズが積まれていたのだ。
高速道路の下に落ちたシューズの入った段ボールは、次々と近隣住民によって持ち逃げされてしまったという。幸い、
軽いケガで済んだトラックの運転手はメディアの現場取材に対し「今回、整備不良で、このような事故を起こしてしまい
ました。燃えてしまったり持ち逃げされたりしたシューズの被害総額は300万元(約5,000万円)以上になります。これから
どうやって賠償していけばよいのか、まったくわかりません。商品を持ち逃げした人たちには、一刻も早く返却してほしいです」と、
涙ながらに語った。
今回、事故を起こしたトラックは、福建省の工場から出荷されたシューズを積み、江蘇省の倉庫に運ぶ途中だったという。さらに、
積まれていたシューズは、まだ市場では発売されていない新商品だったという。
中国では過去にもシューズを積んだトラックの事故があり、近隣住民によって現場から盗まれるという事件が発生している
運転手の男性はケガを負っていたにもかかわらず、治療費を持ち合わせていなかったため入院はせず、長距離列車で自宅に戻った
そうだ。今後、賠償について関係者と話し合いを進めていくことになる。
今回のニュースは中国でも全国的に大きく報じられ、こうした一連の住民による略奪行為は、人民からも厳しく非難されている。
日本でも災害や事故が発生すると、その裏で火事場泥棒に走る事件が後を絶たないが、人の不幸につけ込むような犯罪行為は断じて
許されない。

http://tocana.jp/2017/12/post_15349_entry.html