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> では、肺がんの原因は何なのか。疫学調査では因果関係を証明することは出来ませんが、どこに原因がありそうかを推測することは出来ます。つまり、多額の研究費をどこに投入すればいいのか、そのターゲットを見極めるための予備調査が疫学調査です。
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> 喫煙が肺がんの原因らしいと示唆されると、そこが集中的に研究されます。そして、たばこの煙の中に40種類以上の発がん物質が発見されました。これは正しい方向性ですが、問題は実験方法でした。発がん物質の研究は失敗だったと前々回に書きましたが、細胞は分裂する過程で、
>正常の状態でも一定の確率でがん化します。がん細胞は発がん物質が存在しなくても毎日5000個ほど生まれていて、NK細胞という免疫系で排除されていることがわかってきました。
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> 最近はがんも治る病気になって、治癒してからしばらくすると別のがんになる人がいます。「20年前に胃がんで手術をしていて、10年前には大腸がんで、今回は膀胱がんの手術をする」などと、3回目のがんの手術を受ける患者も珍しくありません。もちろん再発や転移ではなく、新しく発症したがんです。
>こういう患者は、NK細胞の活性が低い人なのかもしれません。何か、NK細胞の活性を下げる因子があるのでしょうか。その因子を見つければ、がんの原因を突き止めたことになります。
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> それは遺伝的な体質の違いなのか、あるいは生活環境の問題なのか。いずれにせよ、細胞をがん化させる発がん物質という観点は時代遅れで、がん細胞を排除する免疫系に着目するのがこれからの視点です。