マイルス・デイヴィスの「世界最高のロック・バンド」とは?【ジャズを聴く技術 〜ジャズ「プロ・リスナー」への道】
10/5(木) 17:02 サライ.jp
https://news.yahoo.co.jp/articles/33fb48a758fe608d23c58415de22f6578d7b2f42


文/池上信次

前回に続きマイルス・デイヴィスの「名言」を紹介します。

<お望みとあらば、世界最高のロック・バンドをつくってやろうか>

マイルス・ファンならずともジャズ・ファンなら一度は見聞きしたことがあることでしょう。これは「名言」というより、マイルスという人物像を的確に表わした「名台詞」というべきものですが、1960年代末、ロックに席巻されていた当時の音楽シーンに対して、(それにより隅の方に追いやられた「ジャズ」の)マイルスが、自身のポテンシャルについて豪語した言葉とされています。そしてマイルスは、実際にロックのフィールドに進出し、成功を収めます。

この言葉は、アルバム『ジャック・ジョンソン』(コロンビア)の国内盤CD(ソニー)帯のキャッチコピー(96年発売盤ほか)として使われていたこともあってか、「世界最高のロック・バンド」はこの「ジャック・ジョンソン・セッション」バンドを指しているように思われていることが多いようです。しかし、マイルスのロックへの進出は『ビッチェズ・ブリュー』(コロンビア)が先です(このアルバムの「ヒット」については第68回で紹介しています)。ただ、録音の時期も近く、『ジャック・ジョンソン』の方がストレートな「ロック」なので、この解釈もありなのでしょう。しかし、元をたどるとじつはこの「世界最高のロック・バンド」は、直接『ビッチェズ・ブリュー』や『ジャック・ジョンソン』を指したものではありませんでした。

この発言の出どころは、アメリカの音楽誌『Rolling Stone』1969年12月13日号(第48号)に掲載されたマイルスのインタヴューです。表紙はマイルス単独で、同号のメイン記事になっています。内容は、同誌の創刊編集者ラルフ・J・グリースンのリードとドン・デマイケル(当時:元『DownBeat Magazine』編集長)のインタヴューで構成された力の入ったもの。その記事のタイトルが、そのものズバリのこの言葉なのです。

<I could put together the greatest rock and roll band you ever heard…>

インタヴューはかなり長いもので、話題は多岐に渡りますが、「最高のロック・バンド」が出てくるのは「I Pick Who I Like」と見出しが付けられた段落。見出しを本文から意訳すると「バンドにはデキる奴を起用する」という感じです。本文中のマイルスの発言を拾ってこの章の大意を紹介すると、「金もクルマも服も女もすべてオレ自身が選んできた」という発言に始まり、チャーリー・パーカーやジョン・コルトレーンら歴代の共演者を紹介します。そして「バンドのメンバーはオレが選ぶ」「友情だけではバンドはやれない。必要なのはクオリティで、よい性格ではない」「適切なタイミングで適切なプレイができるメンバーがいれば、なんでも演奏できる」と言って、ロン・カーター、ハービー(ハンコック)、トニー(ウィリアムス)の名を挙げます。その直後に続くのがタイトルになっている言葉で、文章の流れで訳すと「(オレがメンバーを選べば)最高のロックンロール・バンドだって組むことだってできる」となります。

(※以下略、全文は引用元サイトをご覧ください。)