「週刊文春」編集部

「あの人の足音が聞こえるだけで、叱られるんじゃないかと、心拍数が上がっていました」

 そうパワハラ被害について重い口を開くのは元ラジオNIKKEIのアナウンサーだ。あの人とは――。

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東工大の生命理工学部に進学し、アナウンサーに

 ラジオNIKKEI(日経ラジオ社)は、1954年に日本短波放送として創業。日経新聞の関連会社として平日は金融関係の放送を行うが、マーケットが休みの土日は日本中央競馬会(JRA)のレースを実況することで知られる。

「JRAの実況は同社のアナが担当。競馬場や競馬専門チャンネルなどでも音声が流れています」(競馬記者)

 そのアナウンサー陣を束ねるのが、報道・スポーツ局長の中野雷太アナ(48)だ。

「名古屋の旭丘高校から東工大の生命理工学部に進学し、アナウンサーとなりました。昨年、一昨年と有馬記念の実況を務め、冷静沈着な語り口で定評がある。NHKのドラマ『風の向こうへ駆け抜けろ』に出演して実況アナ役を務めるなど活躍中です」(同前)

2人のアナが退職した原因は“中野アナとの関係”

 競馬ファンにはソフトな印象のある中野アナだが、社内での評価は違うのだという。同社のアナウンサーは10人ほど。この5年でAアナとBアナが退職したが、その原因が中野アナとの関係にあるという。

「Aアナは、部長の中野さんがシフトを調整して自分ばかり人気のレースを担当していると不満を持っていた。退社の際に中野さんから『うちの会社の仕事を取ったら、評判を落として業界にいられなくしてやる』と言われたそうです」(同前)

 被害者のひとりBアナが話す。

「実況だけでなく、伝票処理など日常の業務にもマイルールがあって、それを逸脱すると説教がはじまる。空きスタジオで、一対一になり30分ほど。脚を組みながら『自分勝手なことは許されないぞ』と理詰めにされます。一切笑わずとにかく怖い。激しい言葉は使わないが、精神的に辛くなる。病院に行くと適応障害と診断された。会社の総務にも相談しましたが、『ああいう人だから』と取り合ってもらえませんでした」

「社内にあの横暴を止められる人間はいない」

 同社で働いたことのあるフリーアナウンサーも語る。

「軽い発声障害で声が出づらくなったアナもいた。彼によると、理詰めで自分の価値観を押し付けるような叱責を、何度も受けていた。ある時、突然、声帯が締まって発声しにくくなる症状が出たそうです。中野さんに報告すると、『努力不足じゃないか』と言われた。医者からは原因は不明と診断され、会社に訴えることも出来ず泣き寝入りすることに。大阪に転勤して中野さんと離れたため、症状は回復したそうです」

「実態を知って欲しい」と社員のCアナも取材に応じた。

「あいつのことを恨んでますよ。説教の時は腕組みをして、スタジオの前で本番が終わるのを待ち構えているんです。そして『お前、何なんだ、これは』と喧嘩を売るような口調で叱りつけてくる。一時期、放送が終わる度にやられていました。社内にあの横暴を止められる人間はいません」

パワハラについて、本人に電話で話を聞くと…

 中野アナに電話で話を聞いた。

――部下をきつく叱責している?

「叱責とかってあれはないですよ。部下なわけですから、いろいろ(仕事についての)相談も受けていた」

――会社からパワハラに関して言われたことは?

「いや、まったくないです」

――自分で調整して人気レースを実況していた?

「ないですね。結果(実況)をみてもらえればわかると思いますよ」

 ラジオNIKKEIに聞くと、こう回答があった。

「社員からハラスメント等の訴えがあった場合は適切に対処しております」

 中野アナが“出走停止”となる日は、来ないようである。

https://bunshun.jp/articles/-/60659