プロ野球・日本ハムなどでプレーし、23日に引退を表明した金子千尋さん(39)の引退セレモニーが30日、
長野市の長野オリンピックスタジアムで行われた。本人には内緒の「サプライズ」として長野商業高校時代の
同級生で妻の寛美さん(38)が発案し、同校野球部の元チームメートが企画。プロのマウンドでは常に冷静だった
金子さんが人目もはばからずに涙をこぼした。

室内練習場で恒例の野球教室があり、野球少年たちを指導していた金子さん。教室が終わるとともに、外から
威勢のいいかけ声が聞こえてきた。金子さんがグラウンドに出ると、ノックを受けていたのは見知った面々。
「千尋、早くこい!」。最初は戸惑っていた金子さんも、2000年春の甲子園を一緒に戦った仲間に囲まれると、
次第に表情を和らげた。

監督だった山寺昭徳さん(77)や担任も駆け付け、金子さんをねぎらった。あいさつでマイクを向けられた
金子さんのひと言目は「みんな、おっさんになったなあ」。だが「引退会見より泣きそう」と言った瞬間、
涙があふれた。「心から長商に入って良かった」。語る言葉が震えた。

新潟県出身で、小学生の時に長野市に移り住んだ。05年にオリックスに入団。14年には最多勝と最優秀防御率で
沢村賞とリーグMVPに輝くなど、プロで18年間戦った。活躍は華々しかったが、10月に日本ハムから自由契約になった後も
現役続行の道を模索したため、引退試合やセレモニーは行われなかった。

「どうしてもやってあげたい」。今月23日の引退会見直後、寛美さんはチームメートだった釼持(けんもつ)貴広さん(39)に相談。
釼持さんらはかつての“球友”のためにと1週間で準備。多忙な年の瀬にもかかわらず、県内外にいる元チームメート18人を
含めて約120人が集まった。

最後は仲間たちに胴上げされ、何度も宙を舞った金子さん。「自分を育ててくれた」と語る信州の地で、笑顔で現役生活に
別れを告げた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ba6284973925fb5ccba1201b985f3c2b1220319d