「Nike Japan」の公式Twitterアカウントにて公開されたCMが、ネット上で物議を醸している。

 5月28日、「Nike Japan」は1本の動画とともに<今までは「女性らしく」なろうとしてた。だけど、今はもう、何にでもなれる時代。新しい未来を生み出すまで、前に進み続ける>との文章をTwitterに投稿した。

Nike Japan
@nikejapan
今までは「女性らしく」なろうとしてた。だけど、今はもう、何にでもなれる時代。

新しい未来を生み出すまで、前に進み続ける。
⚾⛸
https://mobile.twitter.com/nikejapan/status/1398112605328134147
https://video.twimg.com/ext_tw_video/1398112432145321985/pu/vid/640x360/r_i1Dslsi45B-Y12.mp4

わかば (Green Foliage)
@fru6ZPhERfBrTfD
5月31日
返信先:
@nikejapan
一消費者として、動画の率直な感想です。
勘違いもはなはだしく、非常に悪趣味に思います。

spoon🎗グラスで乾杯日本国旗走る女性
@calmin3
5月31日
返信先:
@nikejapan
女らしさを持つ持たない事と、何にでもなれると思う希望は相反する事なのか?
女らしい部分は持ち続けて良いはず。

アメリカから見た日本
@yamatogokorous
10時間
返信先:
@nikejapan
失敗ですよ。
大コケですよ。
全然、心に響きませんよ。

 このCMには「勇気づけられる」など肯定的な意見が見られる一方で、「言いたいことはわかるけれどもモヤモヤする」「なんかズレてる」と否定的な意見も散見される。
応援してるつもりでも、問題を透明化している

 CMの後半部分で描かれる、今まで女性が少なかった場で女性が活躍する姿は、選択肢の道しるべにもなっており、エンパワーする効果があるだろう。
 しかし、CM前半で提示されていた性差別の問題は社会の構造的な問題であり、女の子たちの努力だけで解消できるものではない。

 CM内で挙げられていた差別を振り返りながら、問題点を挙げていこう。

 まず、打ち合わせで発言できなかったという女性。動画内で映っているのは2,3人の男性であり、会議の場に女性が少ない、もしくは一人であることを描いていると見える。女性を一人だけ話し合いの場に入れ、その一人を「女性の意見」「女性目線」として女性代表にしてしまうことは、現実でも問題視されている。上の立場にいる人々が意識的に会議に女性を増やすなど構造的問題を解消しなければ、会議での発言のしにくさは変わらないのではないか。

 今年2月に注目を集めた東京五輪・パラリンピック組織委員会の元会長・森喜朗氏の女性蔑視発言のように、「物言う女性は面倒」といった差別的な風潮も残っている。こうしたことも会議で女性が発言しにくい空気を作っているだろう。

 二つ目に描かれた、夜道で女性が背後を気にしながら歩くシーンだが、女性が“女性らしい”とされる選択肢以外を選びやすくなっても、夜道を安心して歩けるようにはならない。女性が性暴力のターゲットされやすいことは、差別の問題の一つであるが、その原因は女性ではなく加害者側にある。

 三つ目に男女間の所得格差について。これも言うまでもなく、社会構造の話である。社会構造が変わらないままで「何にでもなれる時代」と女性を応援しても、「所得格差は女の努力が足りないから」という自己責任論に結びついてしまうのではないか。

「女の子だって何でもできる」とは言えない現実で起きている女性差別

 道を切り拓いてきた女性たちの姿は希望になるが、そうした人々は性差別のある社会の中で傷つきながらも努力をしてきた。社会構造を変えなければ「同じような大変な思いをしながらがんばって!」と言っているようなものである。社会構造の問題を透明化したまま、女性の背中を押している図になってしまったため、違和感を覚えた人が多かったのだろう。

 2018年に発覚した医学部の入試差別、女性議員へのセクハラ、アスリートの性的画像の悪用、都立高校入試における男女別定員制など、女性が差別的状況に置かれている場面は多々あり、現状のままではとても「女の子だって何でもできる」とは言えない。

 「女の子がなりたいものになれるような社会」を目指そうとする動画の方向性には賛同できるが、本当に男女が平等なスタートラインに立てる社会であるのか、投げかけるべきは女性や女の子ではなく、社会に対してではなかろうか。
https://wezz-y.com/archives/91305
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