きょう2月22日は「2(ニャン)月、2(ニャン)2(ニャン)日」の語呂合わせで「猫の日」です。猫が名前に付いた食べ物として、ご飯にみそ汁をかけたり、かつお節をかけたりした「ねこまんま」がありますが、「ねこまんまを食べるのは行儀が悪い」とよく言われます。それはなぜでしょうか。

 そもそも、「ねこまんま」がどのようなものなのか地域によって違いがあるようで、また、「ねこまんま」が当の猫にとってよい食べ物なのかも疑問です。ねこまんまに関するさまざまな疑問について、専門家に聞きました。
関東と関西で食べ方に違い

 まず、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

Q.そもそも、「ねこまんま」とはどのような食べ物のこととされているのでしょうか。

齊木さん「『ねこまんま』とは、ご飯にかつお節としょうゆをかけたもの、または、みそ汁などをかけたご飯のことをいいます。『まんま』は『ご飯、めし』の幼児語であり、『ねこまんま』は『ねこめし(猫飯)』『にゃんこめし』とも呼ばれます。『猫』と名前がついてはいますが、現在は人が食べる簡単な食事の一種を指します」

Q.なぜ、「ねこまんま」、もしくは「ねこめし」と名付けられたのでしょうか。

齊木さん「飼い猫の餌は昔、人間のご飯の残飯であることが多かったようです。例えば、ご飯にかつお節、だしを取った後の煮干し、焼き魚の骨をのせたものなどです。まさに猫のご飯、『ねこまんま』でした。それが転じて、かつお節をかけたご飯や、みそ汁をかけた簡単なご飯のことを、人間が食べるものではありますが『ねこまんま』、もしくは『ねこめし』と呼ぶようになったと考えられます。

猫に人の食べ物の残りを与えていた時代の名残で、『残飯に由来するご飯』『見た目にこだわらないズボラな料理』として、名前が定着したのではないでしょうか」

Q.「ねこまんま」が地域によって違うというのは本当でしょうか。

齊木さん「関東と関西、地域によって食べ方も異なるといわれています。関東や東北地方では主に、ご飯にかつお節をかけ、しょうゆを足したものをいいます。かつおのうま味が引き出され、さっぱりといただけます。一方、関西ではご飯にみそ汁をかけたものを『ねこまんま』と呼び、かつお節だけのものより味が濃く、汁気がある、いわゆる『汁かけご飯』です。また、北海道では、かつお節をかけた後、しょうゆと特産品のバターを加えることもあるそうです。

ただし、今挙げた分類にははっきりと境界線があるわけではなく、家庭によって、関東でも汁かけ飯を『ねこまんま』と言ったり、関西でも『かつお節にしょうゆ』という家庭もあったりするようです」

Q.なぜ、「ねこまんまは行儀が悪い」と言われるのでしょうか。

齊木さん「これは主に汁かけタイプの方になりますが、日本伝統の食事の作法に反するためです。古くから日本の食事様式では、汁物に箸を付けた後はご飯と菜(おかず)は交互に食べるのが順序で、汁→ご飯→おかず→ご飯といったように食べることが礼法で定められていました。

この作法はタンパク質や脂肪などの過剰摂取を調節し、食べ過ぎを防ぎ、病気を予防する先人の知恵でもありました。しかし、『汁かけ飯』は食べる際に器を手で持って口をつけ、箸でズルズルとすすりこむ食べ方です。これは礼法に反する行為であることから、現代でも『行儀が悪い』といわれるのです。

また、先述した『残飯に由来するご飯』『見た目にこだわらないズボラな料理』といった、見た目の影響もあると考えられます。特に、汁かけ御飯は残った冷たいご飯にみそ汁をかけて食べるため、『残り物を食べる』という印象が大きいです。食事の作法で大切なことの一つは、共に食事をする人に不快な思いをさせないことで、その観点からすると『行儀が悪い』ということになるのです。

しかし、作法も時代と共に変化していくべきものと考えます。周りの環境に配慮しながら、好きな物を好きな方法で食べることも食生活を豊かにするのではないでしょうか」
★記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/58f2bb979a99a94ddaa191eddd4aac652daef21c