(コラムニスト・海原かみな)

「女性がいると会議が長引く」と放言し、同席者はお追従笑い、世間の非難を浴びると「どうせ俺は老害、粗大ごみだよ」とすねる。森喜朗騒動をどっかで見たことあるなあと思ったら、そうだ、「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(テレビ朝日系)だった。

 東帝大学病院のワンマン院長・蛭間重勝(西田敏行)が、院内カンファレンスで患者の治療方針を発表すると、居並ぶ医者たちは「御意!」と一斉に声を上げ、ボスは相好を崩す。と、室内に響きわたる「異議あり!」の声。大門未知子(米倉涼子)だ。ああ、だから女は厄介なんだという怒りが、院長の顔にありありと浮かぶ。

 やり手の女性が主人公のドラマでは、女性差別やセクハラに無頓着・無知な男性上司――というのがお約束で、綾瀬はるかの「天国と地獄〜サイコな2人〜」(TBS系)では野間口徹の管理官、篠原涼子の「ハケンの品格」(日本テレビ系)でも伊東四朗扮する社長がいた。女性を侮辱する目に余る振る舞いの末に、いずれもギャフンという目に遭うのも森と同じ。

 森放言の本質は、日本社会に根深くある女性を見下す差別意識だが、テレビ各局でもこれをキッカケに「あるフレーズ」があらためて議論されている。「女性にうれしい」や「女性にやさしい」などだ。情報番組のリポーターは、カレー専門店で「辛さ控えめで女性にうれしい」とか、家電ショップで「操作が簡単で女性にやさしい」などと当たり前のようにしゃべっているが、これは「女性は劣っている」「幼稚」という意識の裏返しではないのか。

 パリに長く住んでいた脚本家はこう話す。

「欧米のメディアだったら一発でアウトですよ。もともと男女で違いがないことを、根拠もなく、女性はこういうものと決めつけるのは、基本的にNGです。たとえば、女性は甘いものが好き、料理が得意というような言い方も違和感を持たれます」

 日本のワイドショーでは、女性コメンテーターほど「女性におすすめですね」「女性は××が苦手だから」というようなことを言いがちだ。先般も、「ごみが出ないレトルト食品」という話題で、「女性にやさしいんですね」とコメントしているのを聞いてのけぞった。家事の面倒が減ると言いたいらしいのだが、ごみ出しは別に女性だけがやるわけではないし、そもそもここは「地球にやさしい」じゃないの? 通販番組では、女性に「やさしい」「うれしい」「喜ぶ」は決まり文句となっている。

「最近は、局アナはこうした表現を使わなくなってきているし、台本でチェックする番組も多くなっています。視聴者から、女性に対する偏見ではないかというご意見もいただきますしね。森発言をきっかけに、女性蔑視だけでなく、女性をことさら強調するような言い方は見直そうという話はしてます」(情報番組ディレクター)

「女性に人気」「女性向き」「女性にお似合い」「女性らしさ」といった表現も、これからは番組ではあまり使われなくなるようだ。

日刊ゲンダイ
2/21(日) 9:06
https://news.yahoo.co.jp/articles/72cfa6d0f7d5d75850960bd937d719a18880c590