芸能人の不祥事が起きても、あまり厳しく追及せず論点をずらし、政府の愚策にも矛先を向けず番組だけを盛り上げる。そんな「応援コメント」が、テレビの情報番組のコメンテーターの間で多用されている。
辛口よりも優しく、批判よりも応援を──その風潮がよりいっそう顕著なのがスポーツ界だ。

現役選手を厳しく叱咤するOB解説者のイメージは過去のもの、今求められている「応援コメンテーター」の代表格がサッカー解説者の松木安太郎氏(62)だ。

サッカー中継では、プレーや戦術の解説そっちのけで「いいよーいいよー」「危ない!」と“居酒屋応援スタイル”を確立させた松木氏は、日本代表がシュートを外すと「今のはキーパーがいなかったら入ってますね」。
相手チームに先制ゴールを許すと「事故みたいなものだから」。本田圭佑のシュートがバーに当たると「ゴールちょっとずらしたいよね」……。

その独特の応援解説に当初は賛否あったものの、今では好感を持って受け容れられているようだ。スポーツ紙のサッカー担当デスクが指摘する。

「選手への辛辣なコメントで人気を得た解説者たちは、たまにスポーツニュースに登場するくらい。サッカー日本代表戦となると、松木氏や元日本代表の中山雅史氏のように、技術的な解説よりも“応援団スタイル”の解説が主流。
バラエティでも重宝されるのは前園真聖氏、中西哲生氏、北澤豪氏らですが、彼らも選手に厳しいことは滅多に言わないスタイルですね」

プロ野球でも辛口評論家が姿を消した。

「野村克也さん、豊田泰光さん、西本幸雄さんのように、選手や球団に苦言を呈する評論家が亡くなられ“世代交代”とともに解説口調に変化がみられます。
代わりに目立つのは、江川卓氏や掛布雅之氏、そして赤星憲広氏や新井貴浩氏らもそうですが、選手を『○○君』『○○選手』と呼ぶ。

特に桑田真澄氏は、一緒に並ぶ解説者も君付けで呼ぶほどの配慮の塊。彼らは自分の経験は話すけど、選手の批判は口にしません。
歯に衣着せぬ物言いで人気のエモやんこと江本孟紀氏や谷沢健一氏、高木豊氏などのベテラン勢は健在ですが、勢力図は変わっています」(別のスポーツ紙デスク)

体育会系とは程遠い現状には、「野球評論家の氷河期」が関係しているという。

「地上波の野球中継が激減し、解説の専属契約の枠も狭まりました。現役の選手や監督から嫌われると情報も入らなくなり、仕事も影響を受ける。そうして辛口の解説は激減し、
現役時代の成績に関係なく番組に配慮できる野球評論家が生き残るようになりました」(同前)

10/3(土) 16:05配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/b92fffd76cd8056bd046b9a60164027428f654e6