たまに息子のチームを訪ねてくる中学生たちがいる。OBである。
上半身はがっちり、下半身もパンパンに膨れ上がっている。
硬式のボールを使う「シニア」で野球をやっていて、高校は強豪校に進学する
感じである。

人づてに聞いたところだと、そういう中学生たちがいるチームでは「食トレ」と
いって、練習の合間の弁当のご飯は3合がマストで、その重さを毎回チェックされるとか。
そうやって大量に食べて、体を大きくするらしい。

「“3合飯”みたいな食トレをやってしまうと、身体が早く成長してしまう印象が
あります」と川村さんは話す。

「成長して、そこで止まってしまう。シニアなら15歳くらい。
身長は普通18歳くらいまでは伸びるものなのですが。食トレで急激に大きくなるので、
進学先となる高校側から見たら魅力的に見えるのかもしれません」
しかし大学や社会人、さらにはプロもある以上、野球は高校より先のことも
見据えて指導されるべきなんじゃないか。

「僕らは選手の成長を予測して指導します。全体的には24、5歳くらいで花が
開くイメージです。心身ともに充実するのがそのあたり。
それまではずっと成長です。その前のどこかで伸ばしすぎてしまうと、成長が
終わってしまうんです」

筆者は高校野球のトップレベルあたりを目指しているのだろうか、ハードに
練習する少年野球チームのことを思い浮かべた。
大会に行くと、そうしたチームがたくさんあることに驚く。
午前10時からの試合に備え、6時半くらいから練習をしている感じなのである。
そして、初心者(たぶん1、2年生)も上級者(5、6年生)も似たような練習を
している。その光景からは、段階的な指導は感じにくい……。

大人がいかに子どもの成長を我慢強く待てるかということなのかなと思う。
頼りなげにキャッチボールをしていた息子も、丁寧に見れば大きな進歩を見せて
いるのである。
キャッチボールが普通にできて、バットでボールをとらえて飛ばせるようになって、と。

子育ては我慢の連続だけれども、「段階的な指導」の考えに接してみて、
同じ考えでグラウンドに立ちたいと心底思う“パパコーチ”なのであった。