(続き)

しかし「キャッチボールは野球の基本」なら、ある。
「でも子どもたちにとって一番むずかしいのがキャッチボールなんですよ」
「低学年だと、キャッチボールのときに親が後ろでボールを拾いまくって
ますよね」

キャッチボールが成立しない理由は簡単。捕球ができないからなのだ。

では、野球研究室が開発した「段階的な指導法」で捕球の技術を
向上させるとなると――。

「まずボールから逃げるんです」

使うのはゴムやスポンジのボールでいいという。
「ボールを自分の方に投げてもらって、子どもは逃げる。意識して
逃げるときは、だいたいボールをよく見るものなんです」
確かに! 
初心者の子どもはこんな感じ。捕ろうとするものの、固いボールが怖いのか、
目を半ば背け、グラブを伸ばして体から離れた位置で捕ろうとする。
「最初は体全体で大きく逃げて、小さな動きでよけるように仕向けます。
それから『よけずにボールを手に当ててみよう』と変えていきます」
「手に当てる」はもう捕球の形じゃないか! 

筆者の息子が所属するチームでは、体の遠くにグラブをのばして捕球しようと
する選手に、監督・コーチが叱声を飛ばす。「正面で捕れ!」
でも怖いのだから逃げる格好になっても仕方ない。それならいっそ逃げて、
よく見る技術を養う方が良いのだろう。
それに「逃げる、よける、手に当てる」ならゲーム性もある。
うーん、これも「野球研究」の成果であるわけで、「正面で捕れ!」よりは
楽しめるはずである。

こんな感じで、楽しみながら段階的に成長する仕組みが普及しておらず、
いきなり大人とほぼ同じの練習で鍛練に入るような世界だから、敬遠され、
野球人口の減少を招いているのではなかろうか。
筆者は息子が所属するチームを思う(1学年で1チームをつくれないほど
人手不足の――)。