6/24(水) 16:20配信 motorsport.com 日本版
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 6月21日、NASCARのタラテガ戦でカップシリーズ唯一のアフリカ系アメリカ人ドライバーであるババ・ウォレスのガレージにある、仕切りの引き下げロープが“絞首刑用の縄”のような状態になっているのが見つかったと発表された。しかしFBIの捜査によると、昨年10月の時点ですでに、そのロープはその状態にあったようだ。

 現在アメリカでは警察官によって黒人男性が殺害された事件を発端に、大規模な反人種差別運動が巻き起こっているが、カウンターとしてヘイトクライム(憎悪犯罪)も発生する事態となっている。

 絞首刑用の縄は、アメリカでの黒人差別において歴史的にも大きな意味を持つ物だ。かつてアメリカでは、白人が黒人を私刑によって殺害した上で、木の枝に縄で吊り下げるという陰惨な事件が多発。実際に今回のデモ発生を受けて、アメリカでは木の枝に絞首刑用の縄が見つかる事件も相次いでいる。

 そうした背景もあり、NASCARとFBIは今回の件に敏感に反応。ウォレスのガレージで見つかった縄について、調査を進めていた。

 この事件に関して、弁護士のジェイ・E・タウンと、FBI特別捜査官であるジョニー・シャープ・ジュニアは、次のように共同声明を発表した。

「月曜日、15人のFBI特別捜査官がタラテガ・スーパースピードウェイの状況に関して、多数の聞き取りを行なった。この事件を取り巻く事実と証拠を徹底的に見直した結果、連邦犯罪は行なわれていないと結論づけた」

「FBIの調査によると、ババ・ウォレスに4番ガレージが割り当てられたのは先週だということが分かった。NASCARが提供した写真・映像によると、4番ガレージで見つかった縄は、2019年10月には既にその場所にあったという証拠も明らかになった」

「判明した全ての事実と、全ての連邦法を検討した結果、告発をしないという決定は適切だ。NASCARやウォレス氏、およびこの調査に協力してくれた全ての人々に感謝する」

 NASCARは6月23日に独自に声明を発表した。

「FBIはタラテガ・スーパースピードウェイでの調査を完了し、ババ・ウォレスがヘイト犯罪の対象ではなかったと判断した。FBIの報告は結論であり、写真による証拠によりガレージの引き下げロープが、昨年の秋からそこに配置されていたことが確認されている。これは言うまでもなく、今回のレースで43チームにガレージが割り当てられるかなり前のことだ」

「FBIの迅速かつ徹底的な調査に感謝する。これがババに対する意図的な人種差別的行為ではなかったことを知って感謝する。我々はレースを愛する全ての人々に、親しみやすい包括的な環境を提供するというコミットメントを堅持している」

 この記事にリンクされている写真は、ロープが吊り縄に似た形状となっているところ(写真左上)が写っているものだ。

 昨年同ガレージを使用したウッドブラザーズ・レーシングも、SNSに次のようにメッセージを投稿した。

「週末のレースにヘイト犯罪を行なった者がいなかったことは喜ばしいことだ。我々は、吊り縄のような形のロープがあったことを知って驚いているし、ショックを受けている。我々の従業員のひとりが、22日の朝にそのことを知らせてくれたんだ。しかし昨年の秋にはその状態だった」

 NASCARは、22日(月)に行なわれたレースのスタート前に、ウォレスへのサポートと人種差別反対の姿勢を示すため、ウォレスを中心としたセレモニーを実施した。

 最終的に、今回の事件はウォレスに対する人種差別ではないと結論付けられたものの、NASCARのプレジデントであるスティーブ・フェルプスは、ヘイト犯罪が行なわれた可能性のある事件が起きた場合、また同じ対応をすると主張した。

「我々内部の誰かがこの悪質な行為を犯した可能性があると聞いて不安になった。ヘイト犯罪がなかったとFBIから聞くのは素晴らしいことだ」

「証拠が日曜日に届けられていたとしても、我々は同じことをしていただろうし、同じ調査をしていたと誰もが理解していると思う。我々がそうすることが重要なのだ。我々のスポーツは、人種差別や憎しみのための場所ではない。スポーツとしての我々の一部ではないんだ」