「この時代が悪い」「日本社会が悪い」――。
何かと社会のせいにする人は、身近に必ず一定数がいるものだ。そんな人に疲れてしまうことはないだろうか。むき出しの感情やパワー重視の社会にうんざりすることはないだろうか。
山口周氏との対談『「仕事ができる」とはどういうことか?』を上梓した一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と、ロングセラー『SELFISH(セルフィッシュ)』の監修を行った、株式会社ENERGIZEの代表・秦卓民氏に、コレクトパワー過剰社会ともいえる日本について、「セルフィッシュ」の観点から語り合ってもらった。

この記事の写真を見る

前々回記事:「自分本位な人」が結局大きな幸せをつかむ必然

前回記事:「一流の人は「努力の娯楽化」という共通点がある

■自分を小さく扱うから、期待しなくてもいい

 楠木建(以下、楠木):この本ではSELFISH(セルフィッシュ)を自分本位、と訳していますが、それは自己中心とは大きく異なるんですよね。自分本位の人というのは、無理をせず、未来に期待せず、つねにゆとりがあるもの。「自己中心」の考え方というのは、自分に都合よく考えるということがベースになっていると思いますが、それはあまりにも自分を大きく扱っています。

 秦卓民(以下、秦):自己中心になればなるほど、誰かと比べての損得が判断の基準となる。つまり、他者を気にして生きていくことになる気がしますね。

 楠木:本来、思いどおりにならないことのほうが自然なんです。セルフィッシュな人っていうのは、非常に自分を小さく扱っている。ゆえに、あらゆることに期待をしていない。

 秦:それが、「無理していない」ということにもつながっているんですね。

 楠木:そのとおりですね。

 楠木:自分の思いどおりにならないことに、ひたすら文句を言っている人っていますよね。時代が悪い、環境が悪い、はては日本が悪いといった具合に。

 同じように、過去にさかのぼる人もいます。「高度経済成長の頃はよかった。今は少子高齢化で時代がよくない」という話です。これは、裏を返すと将来に期待しすぎなんですよね。こういうのが、自分がない状態、自分本位でない状態です。

 秦:いますね、そういう人。

 楠木:何があっても、最終的には「日本が悪い、日本がイケてない」っていう答えに行き着く。彼らをよく見てみると、どうも自分が調子よくないっていうことなんですね。自分が調子よくない、パッとしないってことを認めるとつらいので、結局は「日本が悪い」っていう話にしちゃってるんですね。

つづく

3/28(土) 7:55配信 東洋経済
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200328-00336941-toyo-bus_all&;p=1

写真
https://amd.c.yimg.jp/amd/20200328-00336941-toyo-000-1-view.jpg
(左から)楠木建氏と秦卓民氏に「セルフィッシュ」な人は、どんな生き方ができるのか語り合ってもらった(写真:尾形文繁)