会見では肯定も否定もしていないが、チーム作りの過程で東京五輪世代だけでは補えないポジションがあると判断されれば、すぐにオーバーエイジ枠の選手を招集できる体制を整えておく必要がある、と考えていることは伝わってくる。従来の五輪のように本大会の開幕直前で初めて招集・合流するようでは、フル代表と五輪代表の監督を兼任しているメリットも生かされないからだ。

 メリットとは言うまでもなく、森保監督に率いられるフル代表でプレーし、戦術やサッカー観などに精通していることとなる。所属クラブで微妙な立場にある柴崎と中島は、東京五輪世代を中心とする陣容で臨んだ6月のコパ・アメリカ2019にも招集されている。

 柴崎と中島に加えて、DF植田直通(セルクル・ブルージュKSV)もコパ・アメリカ2019と今回のベネズエラ戦の両方に招集された。オーバーエイジ枠を行使すると決めたときには、この3人が優先されると見ていいだろう。森保監督が思い描く序列に割って入るためには、まずはフル代表に招集されることが条件となってくるわけだ。

 昨年9月にフル代表を船出させて以来、森保監督はロシアワールドカップ代表23人のうち20人を招集している。選外の3人は代表引退を表明している長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)と酒井高徳(ヴィッセル神戸)、そして国際Aマッチウィークにはカンボジア代表の実質的な監督を務め、フィテッセ加入後も「二足の草鞋」を継続していく本田となる。

 フィテッセ入りした理由はCSKAモスクワ(ロシア)でプレーしていた当時の指揮官、レオニード・スルツキー監督の存在に負う部分が大きい。モスクワ時代から本田のボランチ起用を考えていたロシア人指揮官はフィテッセでも、本田をボランチまたは中盤の右サイドで使うと伝えているという。

 番組内で本田が言及した「ボールをためられる選手」とは、まさにボランチに求められる要素のひとつである、フィテッセでプレーしながら感覚などをアジャストさせていくことも可能になる。

 東京五輪世代には堂安律(PSVアイントホーフェン)、久保建英(RCDマジョルカ)、三好康児(アントワープFC)ら左利きの選手が多い。しかし、同じくレフティーの本田は番組内で「基本的にはコンフリクトしない」とこう続けた。コンフリクトとは、ポジションが重ならないことを意味する。
「勢いがあって技術力も高い選手たちだとは思うが、僕とはもっている能力の種類が違うと思うし、共存しやすいと思う。ボランチとして出て、彼らを活かす役割が僕の理想となる」

 かつてプレーしたオランダで新たな挑戦をスタートさせることで、本田が思い描くイメージはより鮮明になった。しかし、森保監督が推し進める東京五輪の金メダル獲得戦略との共有部分を拡大させていくには、本田はまだまだ厳しい状況に置かれていると言わざるをえない。