トンガ代表のジャージーの胸には、日本の温かさが詰まっていた。

ラグビーのパシフィック・ネーションズ杯の日本−トンガが3日、大阪・花園ラグビー場で行われた。真っ白のジャージーのトンガは日本に7−41で敗れたが、最後まで大粒の汗を流し続けた選手の胸には、黒色でプリントされた「入ル」、どう見ても日本語のロゴが輝いていた。

トンガ出身で元日本代表、W杯日本大会でトンガ代表のリエゾン(通訳などのサポート役)を務めるタウファ統悦氏は「試合は負けたが、それよりも助けてくれた人たちにすごく感謝してる」と話した。

トンガ代表の懐事情は厳しい。7月にサモアで行われたトンガ−サモア戦は悪天候でグラウンドが荒れ、耳に泥が入り込んで中耳炎になった選手が複数人いたという。しかし、すぐに病院に行ける金銭的余裕がなく、3〜4人の選手が完治しないまま来日。来日後、タウファ氏が知り合いの医者に頼み、何とか試合前までに治してもらったという。

そんな状況の中、1人の日本人が立ち上がった。大阪と東京で飲食店を営む、山崎一氏だ。高校から社会人までラグビー経験のある山崎氏は、トンガ代表の苦しい財政状況を耳にし、知人のつてで、タウファ氏と会った。現実を知り「飲食店として社会貢献活動がしたかった。ハングリーに活動しているトンガ代表の力に少しでもなりたかった」と、トンガ協会に寄付金を送ることを即決した。

そして今回、東京・恵比寿の「韓国食堂 入ル」の店名のロゴが、トンガ代表のジャージーの胸にプリントされたのだった。

タウファ氏は「トンガ代表の選手はみんな『一さん(山崎氏)が僕たちを助けてくれた』って感謝しています」と振り返る。寄付金の金額は「日本の企業なら難しくないけど、トンガでは大金」。金額より何より、初めて会った時、寄付を即決してくれた行動力、何も見返りを求めず気持ちだけで寄付してくれた山崎氏の姿勢に、感謝するしかなかった。

トンガ協会が寄付金を受け取るにあたり、正式に契約が結ばれたのは試合前日の2日。急ピッチで「入ル」のロゴをジャージーにプリントするため、タウファ氏が日本人の知り合いに依頼。こちらも、快く協力してくれたという。

また、来日してから選手やスタッフら約50人分の練習着などを洗う際、コインランドリーに行く金銭的余裕もない中、トップリーグのNTTドコモが洗濯機を貸してくれたという。「来日してからの1週間は、本当に日本に助けてもらった」とタウファ氏は感謝の言葉を続けた。

トンガからの初の留学生で、元日本代表のノフォムリ・タウモエフォラウ氏が来日してから39年がたった。今でも日本代表のみならず、日本ラグビー界で多くのトンガ出身選手が活躍している。トンガ代表のジャージーにプリントされたロゴは、これまでつながれてきた日本とトンガの絆が、さらに深まった証だった。【佐々木隆史】


2019年8月4日15時56分
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