「講演会で幼稚園のお母さんたちにお話しする機会があるんですけど、“うちの子、お弁当食べないんです”なんてエレベーターの中まで追いかけてくる方があるんです。
近所の人には話せないけど、この人に話してみようと思ったのかな。
たぶん必死になって育てているのよね。だから大丈夫、お腹がすいたら食べるものだから、なんて言うんですね。

小さいお子さんを連れているお母さんに会うと、可愛いですね、何歳ですか? なんて声をかけたり、エレベーターでバギーの人を先に降ろしてあげたり。
ボランティア活動はなかなかできないですけど、そういう何げないことでお母さんたちをホッとさせてあげられたらなと思っています」

芸能人の葬儀取材

たびたび芸能人の葬儀も取材した。「葬式リポーター」と表現されたこともある。

「芸能はスキャンダルとかあまりやってなかったんですけど。葬儀はある程度の年代じゃないとダメということで、私のところに来たんです」

葬儀は故人の最後の舞台になるので、できるだけその人が浮かび上がるように伝えたいと思っていた。
有名な俳優でも弔問客が少なかったり、端役でも大勢の人が集まったり、数だけの話ではないが、結局、最後に人柄が表れるものだと感じたという。

「歌手のディック・ミネさんの葬儀では、腹違いの息子さんたちがパーッと6、7人並んで、すごく仲よくしてらして感動しましたね。
ミネさんは遊び人みたいに言われてましたけど、お父さんを中心にまとまっていたんでしょうね。

俳優の若山富三郎さんのときは弟の勝新太郎さんが徹夜して探したという富三郎さんの傑作の三味線を流して、最後の挨拶では隠し子といわれた息子さんをいちばん上に立たせてあげたりして、いいことするなと思いました」

葬儀の取材でよく居合わせたという元芸能リポーター、藤田恵子さん(68)が東海林さんの取材姿勢について語る。

「私たちは弔問客にインタビューするためにずっと外で待つことになるんですが、東海林さんはくたびれたとか足が痛いとか一切言いませんでしたね。カメラマンにすすめられた脚立にも絶対、腰かけませんでしたよ」

自分の意に反するやり方では取材しないというこだわりもあったという。

「芸能人の自宅へ取材に行くときも、ここでお話ししてよろしいですか? と聞いてからマイクを向けていました。
その基本的なところが私も一致していたから、今も仲よしなんだと思います。謙虚でやさしい人ですよ。でも芯が強いから、誰に対してもやさしくなれるんでしょうね」