ジャニーズ事務所の公取委からの注意問題で生じた日刊スポーツ「空白の173分」
投稿日:2019年7月18日

 2019年7月17日20時59分頃、NHKが「元SMAP3人のテレビ出演に圧力をかけた疑いで、公正取引委員会がジャニーズ事務所を注意」という趣旨のブレーキングニュースをテロップで流した。
さらにその後の「ニュースウォッチ9」で詳細に報道された。このニュースについて日刊スポーツが関連ニュースをネットで公開したのが23時52分と実に3時間近くかかっている。この空白の時間に、スポーツ新聞の宿痾のようなものを感じる。

■ジャニーズ事務所問題、日刊スポーツのサイトを探してみると…

 芸能界ではよくある話なのだろうが、事務所と契約がなくなった芸能人の次の仕事を妨害したいたとしたら公正な取引とは言えないのは子供でも分かる話である。
当然、その夜のテレビのニュースでは大きく扱われ(テレビ朝日系報道ステーションを除く)、翌日の各新聞も同様である。

 それでわが日刊スポーツを見ると…。ネットをいくら探しても、その記事がない。関連記事を見たら「元スマ民放出演への圧力報道をジャニーズ事務所否定」という記事があった。確認できる限り日刊スポーツのネットではこれが第一報である。

 これはおかしい。この記事は「公取委が注意した」という報道(1)がなされて、それ対してジャニーズ事務所が否定したという報道(2)である。つまり報道(1)が前提になっている記事。
それを報道(1)についてユーザーに何も知らせず、いきなり「そういう報道を否定した」という報道(2)を流すのは不自然である。ユーザーはそのもともとの報道(1)を知らないわけで、(何の話?)となるに違いない。

 日刊スポーツが報道(2)の記事をアップしたのが7月17日23時52分。共同通信47NEWSは同日23時45分に、報道(1)の記事をアップしている。
僕は日刊スポーツのネットの部署である電子メディア局に長年在籍していたので分かるが、日刊スポーツは共同通信からの配信を受けており、当然、この報道(1)に基づく記事も配信されていたはず。
そうであれば、報道(1)のニュースをクレジットで(共同)と入れる、つまり共同通信配信記事であることを明示してアップすればいい。その上で報道(2)を入れればいいのに、なぜか報道(1)の記事がアップされていないのである。

■スポニチは第一報から46分後にアップ、なぜ日刊スポーツは遅れたのか

 もちろん、共同通信が「ネット配信不可」という制限をかけることもあり、その例だったのかもしれない。しかし、それならばNHKが21時前に第一報を流し、「ニュースウォッチ9」で詳細に報じているのであるから、
報道(1)に関して「NHKがこのように報じた」ということだけを速報でネットでアップすることは可能であるし、僕がいた時代はそのようにニュースを処理していた。おそらく、今も変わらないであろう。
ニュースの裏付けが取れないから、あくまでも「国内のメディアがそのような事実を報じた」という外観上の事実だけを伝えるのである。NHKがそのような報道をしたこと自体、ニュースバリューがある。
そのように伝えることがニュースを抜かれた報道機関としての最低限の責務であろう。

 一方、スポニチのサイトを見ると21時45分に報道(1)がアップされている。おそらく元記事は共同通信と思われるが、「関係者への取材で分かった」と書いてあるから、独自に取材をした体裁を取っている。
スポニチに公取委が取材できるとは思わないが、いずれにせよ、NHKの報道(1)の後、1時間以内にはニュースを発信しているのである。ここで各媒体の動きを時系列で見てみよう。

【7月17日の各媒体の動き】
20:59(頃) NHKがテロップで第一報を流す。…報道(1)
21:00 ニュースウォッチ9スタート。番組内で大きく扱う。
21:45 スポニチがネットに「元SMAP出演に圧力か 公正取引委員会がジャニーズ事務所を注意」の第一報…報道(1)
23:45 共同通信が自社媒体に記事をアップ「元SMAPテレビ出演に圧力か」…報道(1)
23:52 日刊スポーツがネットに「元スマ民放出演への圧力報道をジャニーズ事務所否定」の記事をアップ。…報道(2)

>>2-5あたりに続く)

ジャーナリスト松田隆 公式サイト
https://t-matsuda14.com/blog/20190718/
画像:7月18日付け産経新聞より
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