当コラムの打ち合わせをしたデスクから、こう尋ねられた。

 「独立リーグを“毒見”に使うってこと?」

 言い得て妙だ。米大リーグ機構(MLB)から日本時間9日に届いたニュースリリースに目を疑った。先月末に3年間の業務提携をした独立リーグのアトランティック・リーグ(ALPB)が、今季開幕戦から新ルール7項目を試験的に導入すると発表。まさに大リーグの「実験台」とする内容だったからだ。

 〔1〕球審はストライク、ボールの判定に弾道測定器「トラックマン」の補助を受ける(一部で“ロボット審判”と報じられた)〔2〕投手交代と負傷以外でコーチ・選手がマウンドへ行くのは禁止(ピンチでマウンドに集まれない)〔3〕投手は負傷を除き、最低3人の打者かイニング完了まで投げる(ワンポイント禁止)〔4〕本塁以外のベースのサイズを15インチ(約38センチ)四方から18インチ(約46センチ)四方へ拡大〔5〕二塁ベースの左右に内野手2人ずつを配置(守備シフトの禁止)〔6〕攻守と投手交代の時間を2分5秒から1分45秒に短縮〔7〕7月の後半戦から投手プレートの位置を24インチ(約61センチ)後方へ下げる。

 同じ野球とは呼べなくなり、記録の比較さえ難しくなるような内容なので、あえて7項目すべてを列挙した。大リーグのマンフレッド・コミッショナーは就任時から試合時間の短縮に熱心。今季オープン戦で投球間の秒数を表示する「ピッチ・クロック」をテストしたものの、投手の猛反発にあい公式戦では見送りとなった。

 次なる手としてALPBを利用。経営の安定を保障する代わりに「毒見役」を担わせ、選手やファンの反応をみて判断するつもりなのだろう。

 そもそも近年の大リーグで観客動員数が減り、人気が落ちているのは、本当に試合時間の長さが原因なのだろうか。野球から独特の駆け引きや間を奪ってしまうコミッショナーの迷走ぶりの方が、悪影響を与えているようにも映る。

 ■田代 学(たしろ・まなぶ) サンケイスポーツ編集局次長。1991年入社。プロ野球や五輪担当などを経て、2001年から13年11月まで米国駐在の大リーグ担当キャップ。全米野球記者協会の理事や、13年ワールドシリーズの公式記録員を日本人記者で初めて務めた。米国での愛称は「ガク」。

2019年3月14日 17時15分夕刊フジ
http://news.livedoor.com/lite/article_detail/16159869/