ハワイ州マウイ島ラハイナで行われた「マウイ・インビテーショナル」に出場したゴンザガ大は、決勝でデューク大を破り9年ぶり2度目の優勝。ゴンザガ大3年生の八村塁(20)が、トーナメントのMVPに選ばれた。

2点リードの残り10秒、八村はインサイドで体を張り、ディフェンスリバウンドをもぎ取ると、雄叫びをあげた。その声はゴンザガファンの声援、デュークファンの悲鳴にかき消されたが、名刺代わりにこう言っているようにも聞こえた。

「Hello,World!」(世界よ、おれが八村だ)

 その八村は残り45秒で2ブロック、1リバウンドをマーク。残り2秒を切ってデューク大のスーパールーキー、RJ・バレットが同点を狙ってレイアップしたときも、「触ったのを覚えています」。ブロックは一緒に飛んだチームメイトのブランドン・クラークについたものの、ゴール下で鬼気迫る活躍を見せた八村は、トーナメントのMVP(最優秀選手)にも選ばれている。

 その残り45秒。「あれはもう、自分でも何がなんだかわからない」と八村は振り返り、こう続けた。

「気持ちでやったようなもの。体力的に限界に来ていた」

 今年33回目となる「マウイ・インビテーショナル」は、招待された8チームによる戦い。3日間で3試合を戦うタフなスケジュールで、しかもゴンザガ大は、初戦、2戦目と厳しい戦いを強いられ、しかも2戦目が終わってから、16時間後にはもう決勝戦を迎えていた。八村も「昨日の試合が終わって、十何時間ぐらいしか休みがなくて、そのまま来ている」と苦笑。ただ、中盤まではデューク大を圧倒し、疲れを感じさせなかった。残り10分40秒で八村がフリースローを2本とも決めると、75対60とリードを広げた。

 ところがそこから形勢が逆転。今季7試合で35秒しかリードを許していない全米ランキングの1位のデューク大は、 残り7分33秒でまだ13点あった差を残り5分で4点にまで縮め、そこからさらに、じわじわと詰め寄る。

 デューク大には、バレットの他、ザイオン・ウィリアムズ、トレ・ジョーンズという、来年のNBAドラフトで1位指名――。しかも全員がトップ5で指名されるのでは、というトッププロスペクトが揃い、目下、NBAで勝率最下位のキャバリアーズよりも強いのではと言われるが、そのウィリアムズらの活躍で、ついに残り1分45秒で追いついた。

 その間、八村はといえば、リズムを失っている。シュートは入らず、フリースローも入らない。「(疲れで)集中力が切れた」と八村は振り返ったが、「切り替えるしかない」と自分に言い聞かせていた。あまりの疲労でそれすらも苦労したが、最後の最後でスウィッチが入る。実は、残り10秒でリバウンドをとったとき八村ファールをもらってフリースローラインに立ったが、2本とも外した。

 が、それで目が覚めた。

「ディフェンスで絶対守ってやろうと思いました」

さて、ランキング3位のゴンザガ大が1位のデューク大に勝ったことで、おそらく順位が入れ替わる。
 八村も「僕たちが全米で1番」と豪語したが、八村にとってもこの試合は意味を持った。試合前、トーナメントを中継したESPNの電子版は、八村と、ウィリアムズらのマッチアップに注目。「彼らと対等に戦えるかどうかで、八村が本物なのかどうかが分かる」とし、続けた。

「もしも彼が、ゴンザガを優勝に導くなら、彼の価値は、一晩で急上昇するだろう」

現実は、その通りとなった。八村が来年6月のNBAドラフトで、何位で指名されるか。各スポーツサイトの予想を見ると、「スポーツ・イラストレイテッド」誌が10位、「nbadraft.net」が11位となっている。しかし、ESPNの見立て通りなら、明日にはトップ10に入っているのではないか。

 八村はデューク戦の勝因について、「経験の差で、僕たちが勝てた」と話したが、彼自身も、自分の経験値が上がっていることを実感していた。

「どこが勝負どころかっていうことも分かりますし、そういうところで頑張れるかどうかが勝ちにつながる、ということも分かる」

 その自信は別の言葉にもにじみ出ている。「絶対、守ってやる」と迎えた残り10秒。八村は自分に言い聞かせた。

「I’M THE BEST PLAYER」(俺が最高の選手)

 相手のシュートが、八村の頭を越えることはなかった。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181122-00010002-wordleafs-spo&;p=2

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