◆ 大阪桐蔭の「フライボールレボリューション」

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会は21日に決勝が行われ、大阪桐蔭(北大阪)が金足農(秋田)を13-2の大差で破って、史上初となる2度目の春夏連覇を飾りました。試合は、5回までの攻防で大勢が決する形となりました。

 この試合、5回までの大阪桐蔭のアウトを見てみると、フライアウト10、ゴロアウト1、三振4と、ボールを打ち上げていることがわかります。

 金足農業の吉田投手は、もともと高めへの配球が多いのですが、この試合でも44.7%が高めに配球されています。大阪桐蔭は序盤からこの高めのストレートに的を絞ってスイングしにいってることがわかります。

○スイングした球のコース
高め 59.6%   
中 26.3%  
低め 14.0%

 その狙いが回を追うごとに効果として現れ、3回裏の中川選手のヒット、藤原選手の二塁打、4回裏の宮崎選手のホームランは、いずれも高めに甘く入った球でした。そして5回裏、この時点ですでに94球を投げていた吉田投手の投じる球は、吸い寄せられるかのように真ん中に集まり出します。この絶好球を大阪桐蔭打線が見逃すはずはなく、7安打、12塁打の猛攻を浴びせ、この夏マウンドに立ち続けた豪腕・吉田投手に引導を渡す形となりました。

 メジャーや日本のプロ野球では近年、「フライボールレボリューション」というフライボールを打つことで長打を狙い得点力を高めるという理論がありますが、体格の違う高校野球でこれをそのまま導入するのは至難でしょう。しかし、高めの球をしっかり振りにいって強い打球を弾き返すという基本を身に付けることは重要です。決勝では、大阪桐蔭の基本に忠実なバッティングによる攻撃力の強さの集大成が表れました。

両校で大きな差が生まれた守備力

 9番・柿木選手を除けば、5回までに大阪桐蔭の放ったゴロは4回裏ノーアウトから7番・山田選手がセカンドに放ったゴロのみ。しかし、このゴロはセカンドの送球ミスによってアウトにできず、ランナーを残してしまいます。これが金足農業4回裏の3失点につながってしまうのです。今大会、金足農業は6試合すべてで失策を記録、総計8個のエラーを出しました。ちなみに大阪桐蔭は6試合で失策4、無失策試合4と堅守を示しています。

 さらに、大阪桐蔭と金足農業に大きな差がある指標がありました。グラウンド上に飛んできた打球のうち野手がアウトにした割合を示すDER(守備効率:Defensive Efficiency Rating)というものです。

 DERは(打席数―被安打―与四死球―奪三振―失策)÷(打席数―被本塁打―与四死球―奪三振)で計算されます。

○ベスト8に残ったチームのDER

日大三 DER 77.7% 失策2
報徳学園 DER 76.8% 失策2
浦和学院 DER 72.2% 失策3
大阪桐蔭 DER 71.7% 失策4
済美 DER 67.9% 失策5
下関国際 DER 67.6% 失策4
近江 DER 66.7% 失策4
金足農業 DER 58.2% 失策8

 この指標は投手が打たれる打球の質にも依存するので、これが守備力すべてを示す指標ではないことはご承知おき願いたいのですが、守備範囲の広さや打球処理など、失策数には表れない守備の優劣がこの指標に大きな影響を与えていることは確かです。金足農業のDERはベスト8の中でも群を抜いて低いことがわかります。
DER58.2%ということは吉田投手の打たれた打球の4割以上はヒットにされているということです。平均で打率は3割ですから、これはかなり辛い状況と言わざるを得ませんし、これが1試合平均146を超える投球数の要因ともなっていると考えられます。

 それに対し、大阪桐蔭のDERは71.7%と平均より高く、決勝でも大差のついた中、無失策で柿木投手をバックアップしています。この守備力の差もスコアに反映されたのかもしれません。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180822-00186153-fullcount-base