前田幸長も、野口と同じ思いを抱いていた。「巨人は外様なら、平気で選手を潰すチームだ」と確信した試合があるという。

「5点ほど点差があった状況で『前田、9回裏に登板するから準備しろ』と言われた。すると9回の表、味方がさらに追加点を奪って7点差になったんです。僕じゃなくても抑えられるセーフティーリードですよ。さすがに温存されると思いました。
しかし監督は『前田行け』と。巨人にとっては、僕がそのシーズンで壊れてもいいんです。それよりも目の前の1勝を確実に獲ることのほうが重要。負けることが許されないチームとは、こういうものかと思いました」

得点差があり気の緩みもあったのか、登板した前田はツーランを浴びた。

「あの試合から調子を崩してしまいました。しかし僕ら外様は組織の『駒』です。それもリリーフとして補強された選手なんて、将棋でいえば『歩』みたいなもの。
行けるとこまで行かせて、ダメになったら新しい駒を探せばいい。だからあの時、僕を温存するなんて発想はなかったんでしょう」