「ハートで動く人なんですよ!」(出川哲朗/テレビ東京「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」7月14日放送)

 電動バイクで地元の人たちに充電をしてもらいながら旅をする出川哲朗(54)のゴールデン初の冠番組。そのスペシャルゲストに、まさかの明石家さんまが登場した。お正月特番「さんま・玉緒のお年玉 あんたの夢をかなえたろかSP」(TBS)のエンディングで、出川が「ぜひ、出てください」とお願いしたことがきっかけだった。

 もちろん、出川も冗談半分で言ったのだろう。何しろ、相手は明石家さんまである。だが、本当に出てくれたのだ。まさに「神対応」。さんまにとっては、ほとんどメリットのない番組にもかかわらず、出てくれたさんまについて語った出川の言葉を今週は取り上げたい。

 出川とさんまといえば、あまりにも有名な逸話がある。2005年11月12日放送の「恋のから騒ぎ」(日本テレビ)でのことだ。その日、新人として登場した22歳の女子大生。さんまが彼女に将来の夢を尋ねると「二流タレント」になりたいという答え。それにすかさず「一流は目指さへんの?」とさんまが言うと、「二流のトップ」がいいと返す。「二流のトップって誰やねん?」と笑いながら言うさんまに彼女は「出川さん」と即答した。

爆笑しながらも、さんまは「(出川は)一流や、アホ!」とツッコみ、「何が二流のトップが出川さんや……」と突っ伏して笑った。このエピソードについて、出川は「さんまが怒った」などと脚色を加えながら事あるごとに披露する。本当にうれしかったのだろう。何しろ、当時はまだ「嫌われ芸人」の代名詞的存在だった頃だ。

 時を経て、出川の世間的評価は一転。好感度タレントへと変貌し、女性や子供たちに大人気となった。そして、かつてさんまらが「オレたちひょうきん族」(フジテレビ)などで築き上げた伝統の土曜夜8時台の枠で、レギュラーの冠番組を持つまでになったのだ。それを意気に感じ、ゲスト出演するのは、さんまにとって自然なことだったのだろう。

 さんまも出川も番組中、自然と集まってくる地元の人たちと気軽に写真撮影や握手、果ては安産祈願まで行う「神対応」を繰り返していた。

同番組の平山大吾プロデューサーによると、出川はよく「こっちが壁を作らなければ、向こうも壁を作らない」と語っているという(KADOKAWA「ザ・テレビジョン」18年7月11日)。そうして損得を抜きに、誰とも「壁」を作らずハートをさらけ出し続けたからこそ、そびえ立つ芸能界の「壁」を突破していくことができたのだ。

 常に「神対応」のさんまの背中を見て育った出川もまた、「ハートで動く人」なのだ。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/233837/3