また守備の戦術にひとつの方向性を出したことも評価したい。プレスの時間を減らして基本的にはコンパクトな守備ブロックで守った。

無駄な走りを減らすことで体力も温存できるし守備への意識も高まる。3戦続けて、前半に先に失点するという課題は残ったが、
コロンビア戦は、絶対に堅い守備から入らなければならないのだから、この段階でチームの方針を固めた意義はある。


おそらくガーナ戦、スイス戦では、守備の戦術について選手の考えと西野監督のイメージにズレがあったのだろうが、決して頑固にならず、
選手の意見や考えを聞き入れることのできる柔軟性が西野監督の流儀である。選手の意見を汲み取った上で、自らの考えをそこへ重ねて戦術、戦略を練り上げていくスタイルだ。

スイス戦では、時間帯とポジションによって、プレスなのか、ブロックなのか、の意識がバラバラだったが、
パラグアイ戦では、まだ危なさは、所々に残ってはいるものの、ひとつの方向性だけは見えた。これも西野監督ならではの手腕だろう。

点を取らねばならない展開になってから、2トップにしてトップ下の香川を右のサイドハーフに配してフォーメーションを変えた。こういう判断力、適応能力の高さも、
西野監督が得意とする部分。指揮官のポジティブな特徴をピッチで表現して最後の前哨戦を締めくくれたこともチームにとってプラスだろう。

ただ、この試合は、たかが親善試合であり、パラグアイと初戦で対戦するコロンビアはまったくレベルの違うチームであることを忘れてはならない。
いずれにしろロシアでは厳しい戦いが待ち受けているのである。

(文責・城彰二/元日本代表FW)