【あの代表監督の成功と失敗】アルベルト・ザッケローニ

 歴代サッカー日本代表で“最強チーム”を選ぶとすれば、それはザッケローニ・ジャパンだったという声が圧倒的だ。

 「ザック(ザッケローニ監督)は本当にいいチームを作ったと今でも思っている」と、自身も元日本代表監督で現FC今治オーナーの岡田武史氏(61)がいうほど。

 しかし、肝心の2014年W杯ブラジル大会では、1次リーグ2敗1分で敗退。ザックジャパン4年間のうち、最初の2年間はアジアで強さを存分に見せつけたが、13年にプレW杯として行われた「コンフェデ杯」では3戦3敗。W杯本大会と合わせて5敗1分け。特筆すべきは2大会で計15失点という守備のもろさだった。要するに舞台が“世界”となると全く歯が立たなかったのだ。

 ザック戦術は「ボールを保持し、パスをつなぎながら相手を崩し、連動したプレーでゴールを奪っていく」スタイルだったが、W杯でこれができたのは3戦目のコロンビア戦の前半45分間だけ。1−1で折り返したこの試合も、後半に3点を連取され撃沈した。

 06年ドイツ大会で惨敗したジーコジャパンと同じ失敗も繰り返していた。ドイツ大会前には、当時チームの“王様”だった中田英寿氏(41)が海外プレスの前で「チームが仲良しすぎる」と発言。中田氏とその他の選手の間にあつれきが生じ、1次リーグ初戦(対豪州)で逆転負けを喫すると、チームは空中分解した。

 ザックジャパンで中田氏の位置にあたったのが、本田圭佑(現パチューカ)だった。「本気で優勝するつもり」と豪語したビッグマウスは周囲から浮き上がった。本田をチームの大黒柱に据えたザッケローニ監督にとっては大誤算だった。

 日本代表はそれまでW杯終了後には、必ず全選手が日本で会見を行っていたのだが、ザックジャパンだけは現地ブラジルで解散している。

 傷心のザッケローニ監督は日本を離れる際、日本協会幹部から「日本代表はこれからもアナタが貫いた攻撃的なサッカーをやっていくよ」と言われ、「私が4年間やってきたことは報われたよ」と苦笑いを浮かべた。(夕刊フジ編集委員・久保武司)

夕刊フジ 6/6(水) 16:56配信
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