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アンドレス・イニエスタのヴィッセル神戸移籍は、Jリーグを大きく動かしている。シーズン中の背番号変更は認められていなかったが、三田啓貴が着けていた背番号「8」を譲り受けてつけることとなった。さらに来季からの外国人枠撤廃に動いていると言われている。そもそも外国人枠は、なぜあるのか。それを撤廃する際にはどういうリスクがあるのか。元週刊サッカーマガジン編集長の北條聡氏に聞いた。(文=北條聡)

外国人枠の撤廃でネックになることとは

この先、議論が活発化しそうだ。
一部スポーツ紙で報じられたJリーグの外国人枠撤廃の動きである。現在、外国人選手の登録人数は1チーム5人以内。その内訳は「外国人枠3人+AFC(アジアサッカー連盟)枠1人+アジア中心のJリーグ提携国枠1人」だ。

1試合につき最大5人の外国人選手がプレーできる。ちなみに、アジア中心のJリーグ提携国はタイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタールの計8カ国だ(※2017年まではイランも)。

J1で活躍中のティーラシン(サンフレッチェ広島)とチャナティップ(コンサドーレ札幌)のタイ勢は、この提携国枠にカウントされる。つまり、3人しか保有が認められていない外国人枠から「はずれる」わけだ。

最大5人と言えば、スタメンの約半数を占めることになる。それでも過半数(6人)は日本人選手だ。しかし外国人枠を撤廃すれば、日本人選手がスタメンに1人もいない――というケースもあり得るだろう。

実際、EU域内では自国の国籍をもつ選手がほとんどいないクラブもある。FIFA(国際サッカー連盟)はこうした事態を歓迎しておらず、外国人選手のスタメンを5人までに制限する『6+5ルール』の導入を検討してきたほどだ。Jリーグの現行システムも事実上、この「6+5」に準ずる形となっている。

外国枠の撤廃については、これまでにも何度か議論されてきた。そこでネックになってきたのが、日本人選手の出場機会が失われるのではないか――という懸念である。現状においてもなお、なかなか出場機会をつかめない若い世代については、なおさらだろう。

そもそもプロ化した目的の一つは、日本代表の強化にあった。肝心の日本人選手が育たなくては強化も何もない。従来の外国人枠は言わば「保護政策」でもあった。しかし、もはや代表の強化だけがJリーグの目的ではあるまい。よりレベルの高い、魅力的なコンテンツを提供し続けることこそ、大きな目的だろう。

外国人枠を撤廃すれば、世界中から有能なタレントをかき集めたオールスターキャストのチーム編成が可能になる。もちろん、理屈のうえでは。実のところ、先立つものは「枠」以上に「カネ」だろう。

いくら外国人枠を撤廃したところで、カネ(資金力)がなければ、ハイレベルのタレントを集めようがない。Jクラブに分配される、いわゆる「DAZNマネー」の上積み程度では、とうてい世界のトップレベルで活躍する働き盛りのスター選手を獲得するのは困難だ。

しかし、同じスター選手でもキャリアのピークを過ぎたベテランなら、話は変わってくるかもしれない。この夏、ヴィッセル神戸が獲得したスペイン代表のMFアンドレス・イニエスタなどが、そうだ。

神戸は昨夏にも元ドイツ代表のFWルーカス・ポドルスキを迎え入れ、一気に2人のワールドクラスを擁することになった。Jリーグ史上初の2ケタを超える移籍金で元ブラジル代表のFWジョーを引き抜いた名古屋グランパスを含め、莫大な補強費を捻出できるJクラブならば、外国人枠の撤廃は追い風だろう。

つづく

5/30(水) 8:20配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180530-00010000-victory-socc