● 森保一、長谷川健太ら Jの名監督にも不振の時代が

 もっとも、率いたチームが好成績を収め、名監督と称えられた人でも、挫折を味わうことはよくある。Jリーグの日本人監督で指導力が評価された人に森保一氏(現U23日本代表監督)がいる。
2012年から6年間広島の監督を務め、3回リーグ制覇を成し遂げた。2015年のクラブW杯では準決勝に進出し、南米王者のリーベル・プレートを苦しめ、
3位決定戦では世界的名将スコラーリ監督率いる広州恒大に勝って世界3位に輝いている。だが、その2年後の2017年にはチームが絶不調に陥り、17位という散々な成績。不振の責任をとって辞任した。

 その森保氏に匹敵する実績を持つのが長谷川健太氏(現FC東京監督)。2013年、J2に降格したガンバ大阪の監督に就任し優勝。チームを1年でJ1に戻しただけでなく、
翌14年はリーグ戦、Jリーグ杯、天皇杯の3冠獲得という偉業を成し遂げた。その翌年もリーグ戦2位、天皇杯優勝、Jリーグ杯準優勝、ACLベスト4という好成績を残している。

だが、昨年のリーグ戦は黒星が上まわり、10位に終った。また、2015年から鹿島を率いた石井正忠監督は2年間でチームにリーグ戦、Jリーグ杯、天皇杯の3つのタイトルを導いたが、3年目に失速。
現在監督を務めているJ2大宮でもチームを立て直せず下位に低迷している。

もっとも、日本に来た外国人監督には在任期間中、好成績を維持した人はいる。1994年から2年間名古屋の監督を務めたアーセン・ベンゲル氏(現アーセナル監督)、
2000年から6年間鹿島を率いたトニーニョ・セレーゾ氏、2004年から3年間浦和を率いたギド・ブッフバルト氏、2007年から5年間鹿島の監督を務めたオズワルド・オリヴェイラ氏などだ。
ただ、鹿島のセレーゾ氏とオリヴェイラ氏は最後の2シーズンはリーグ戦で上位に食い込んだものの優勝は逃している。名監督といわれる人でも常勝は難しいのだ。



● 世界的な名監督にも不調 勝ち続けるのがいかに難しいか

 これは世界的な名監督として名を轟かせている人も同様だ。たとえば2002年日韓W杯で優勝したブラジルを率いたスコラーリ監督。
2014年ブラジルW杯でもブラジルの監督としてチームを準決勝まで導いたが、ドイツに1−7という大惨敗を喫し、地元での優勝を期待したブラジル国民を激怒させた。
また、2006年ドイツW杯で優勝したイタリアを率いたマルチェロ・リッピ監督も名指導者の誉れ高いが、2010年南アW杯では1次リーグで1勝もできずに敗退。イタリア国民から非難を浴びた。

 ごく少数ではあるが、そうした傷を負ったことがない名監督もいる。チェルシー、インテル・ミラノ、レアル・マドリードなどを率い現在はマンチェスター・ユナイテッドの監督を務めるジョゼ・モウリーニョ氏や
バルセロナ、バイエルン・ミュンヘンを経て現在はマンチェスター・シティの監督を務めるジョゼップ・グアルディオラ氏、代表監督ではドイツの監督を務め、2014年ブラジルW杯を制したヨアヒム・レーブ氏などは、チ
ームを低迷させたことがない真の監督といえるだろう。ただ、それは率いたチームが才能あふれる選手ばかりで、もともと強いということもあるはずだ。
強いチームでも歯車が狂うと勝てなくなることはある。そうならないようチームをマネジメントする手腕がこうした名監督にはあるのだろう。

 いずれにしてもサッカーで勝ち続けること、チームの良い状態を維持することは至難なのだ。ちょっとしたことでチームの状態は良くもなるし、悪くもなり、それが結果に表れる。
多くの監督はその難しさに頭を悩ませ、多かれ少なかれ傷を負いながら監督をしている。

 日本代表の再生を託された西野監督に対する評価にはポジティブな要素もある反面、ネガティブな要素もあるが、今はそれらも参考にならない事態にあるといえる。
ファンとしては直前の監督交代というショック療法がチームを良い方向に向かわせることを信じて、見守るしかないのではないだろうか。

 (スポーツライター 相沢光一)




















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