「体格的、あるいはフィジカル的な要素でなかなか戦えないところもあるし、そういうものに対しては別の角度から対応していく。やはり日本化した日本のフットボールというものがある。技術を最大限に生かし、規律があるなかで結束して化学反応を起こしながら戦っていく強さもある。
 継承していく(ハリルホジッチ前監督の)スタイルの部分と、選手たちにはやはり自分のプレーやパフォーマンスを求めたい。そういうものを、まずは素直に代表チームで出してほしい。それをベースにしたうえで、チームを構築する必要があると思っています」

 技術委員長として間近で見てきたハリルジャパンのなかに、ギャップを感じずにはいられなかったと正直に明かす。頑迷な性格の指揮官が突きつける厳しい要求と、応えられない選手たちが抱くもどかしさ。それらを解消できなかった責任を強く感じつつも、大役を引き受けたからには努めて前を向く。

「個人のプレーに関してはあまり制限をかけたくない。いまは選手たちが求めるプレーを出させたい、表現させたいという気持ちです。日本のよさはグループとしての強さであり、連携や連続したプレーができる選手を、そういうスピリットをもった選手たちでチームを編成していきたい」

 優先されるのは縦への素早い攻撃からパスワークであり、ザックジャパン時代に標榜されたポゼッションスタイルに回帰するサッカーとなる。ハリルジャパンでは不得手な右ウイングで起用されてきた本田は、メキシコの地で切れのある動きを見せている、トップ下を含めた中盤での起用になるだろう。

 左足首を痛めた影響で、2月上旬から欠場が続いている香川真司(ボルシア・ドルトムント)も、復帰してトップコンディションを取り戻す気配を見せれば構想に入ってくるだろう。連携面を優先させれば、岡崎慎司(レスター・シティ)を含めた「ビッグ3」はやはり外せない存在となる。

 時間がほとんど残されていない状況もあり、ハリルホジッチ前監督が作成していた100人近いラージリストのなかから選手を選んでいく。いずれにしても、3月下旬のベルギー遠征で「縦に速い攻撃だけでは」という声が漏れていた選手たちからは、ストレスの類が取り除かれるだろう。

 ただ、忘れてはいけないのは、ザックジャパンが掲げた「自分たちのサッカー」で、4年前のW杯ブラジル大会は一敗地にまみれていることだ。グループリーグで1勝もあげられなかった反省に立ち、ハビエル・アギーレ元監督をへてハリルホジッチ前監督が招へいされた。

 日本サッカー史上で初めてとなるW杯出場決定後の指揮官交代は、チーム内におけるコミュニケーションや信頼関係が少なからず薄れてきた、と田嶋会長が判断したことがきっかけとなった。要は4年間にわたるトライや積み重ねが無に帰すリスクを覚悟のうえで、選手を取ったことになる。

つづく