ぐるなび、アニメ製作委員会に初参入の狙い 『異世界居酒屋』のインバウンド戦略
インタビュー
2018-04-12 14:30 オリコン
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アニメ『異世界居酒屋〜古都アイテーリアの居酒屋のぶ〜』キービジュアル(C)蝉川夏哉・宝島社/古都アイテーリア市参事会
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昨今、日本の映像産業の一般的なモデルとして機能してきた「製作委員会方式」が岐路に立たされている。
ことにアニメ業界においては、動画配信の台頭やパッケージの売上減少など、収益面の問題から体制を見直すべきとの声も多く聞かれるようになった。
そんななか、グルメ情報サービスの「ぐるなび」が、4月スタートのアニメ『異世界居酒屋〜古都アイテーリアの居酒屋のぶ〜』の製作委員会メンバーに加わるという異例の試みに挑んでいる。
同社としてアニメ製作委に加わるのは初であり、まさに“異世界”からの参画だ。政府が推す「クールジャパン」戦略の陰で一種の閉そく感も漂う日本のアニメ産業。そこで「ぐるなび」はどのような役割を果たそうとしているのか、同社の広報担当・北澤輝衛氏に話を聞いた。

■託されたのは「インバウンド戦略」

同アニメは、小説投稿サイト「小説家になろう」で人気の蝉川夏哉氏による作品『異世界居酒屋「のぶ」』が原作。
京都のさびれた通りに店を構えた居酒屋「のぶ」の正面入口が異世界の古都とつながってしまい、大将の矢澤信之と給仕の千家しのぶが異世界の街・アイテーリアで店を始める、という内容。
作中には日本でおなじみの居酒屋メニューも多く登場する。
アニメーション制作は「機動戦士ガンダム」「ラブライブ!」など人気シリーズを手がけてきたサンライズが担当。テレビ放送ではなく動画配信先行で、国内の主要配信サービスのみならず、YouTubeや中国のbilibiliなど全世界約13億人(※視聴可能者数)に発信される。

ぐるなびが同アニメの製作委に加わったのは約2年前。
北澤氏は「サンライズさんからは、(製作委が)いつものメンバーだとどうしても似たような手法になってしまうということで、今までにない作品の宣伝やマーケティングを求められての参加でした」と当時を振り返る。

通常、製作委といば放送局・広告代理店・アニメ制作会社・芸能プロなど業種的にそろう顔ぶれはどの作品でも似通ってくる。
そのため、プロモーションや収益確保のノウハウもテンプレ化され、作品ごとのビジネス的な“最適解”が見えづらくなる面も往々にしてあるのが現実だ。
今回、作品のテーマから“グルメもの”=ぐるなびという表面的な結びつきなのかと思いきや、同社が製作委に加わる狙いには世界のアニメ・飲食マーケットをみすえた「インバウンド(海外からの訪日旅行者誘致)戦略」が根底にあった。

国内のアニメ産業においては「海外販売」の金額がここ数年で急激に伸びており、「BtoB(企業間取引)」では2014年に記録した195億円が16年には459億円と235.3%の増加、「BtoC(一般消費者取引)」では14年の3265億円が16年には7676億円と、こちらも235.1%の大幅な増額がみてとれる(※日本動画協会『アニメ産業レポート2017』)。
日本アニメの海外での急激な需要拡大を背景に、強力なインバウンド基盤を持つぐるなびに同作の“グローバルな拡散”が託されたかたちだ。

「弊社では海外に4箇所の拠点(シンガポール、タイ、香港、上海)を置き、『ぐるなび』の多言語対応や、鉄道会社さんと組んだ外国人観光客向けのガイド『LIVE JAPAN』のローンチや運営と、東京五輪の招致が決まる以前からインバウンドの手立てを確保してきています」。
今ではぐるなびのみならず、LIVE JAPANの利用者数も東京エリアの(外国人向け)観光サイトとしてはトップクラスを誇っており、今後はLIVE JAPAN、ぐるなび外国語版など同社の巨大な情報インフラを駆使して『異世界居酒屋』の魅力を全世界へ伝えていく。

また、同アニメの内容自体にも海外ウケの勝機が詰まっているという。
「海外から見ると日本の“居酒屋”文化ってかなりクールに映るらしいんですよね。日本人からしたらもう見飽きてるものかもしれないですけど(笑)。メニューが小ポーション(少量)でいっぱい食べられて、ヘルシーなものもあるという点が外国の方には魅力的に感じられるようです」と話し、
居酒屋の魅力を海外に発信するという点でインバウンド戦略との親和性を指摘した。