https://www.nikkansports.com/soccer/japan/news/201804110000044.html
ハリル氏「嘘だ陰謀だ」日本サッカー協会に宣戦布告

ハリルホジッチ氏は“死んで”いなかった。おとなしく黙る男ではなかった。
桜咲く、フランス北部リールの自宅。快晴の正午すぎに車庫が開いた。
愛犬コスモを乗せた車を運転し、敷地外に出たところで日本人を見て窓ガラス
を下げた。

 −日本の日刊スポーツです。ぜひ、お話を聞かせてもらえませんか?

 「何も準備していないから…今ここでは話せない」

 そう第一声を発しながら取材者を思いやった。頑固だが、根は優しい。
就任から約3年。記者の直撃を避けたり逃げたことはない。

 「あなた(記者)の仕事は理解できる。昨日も私の電話は鳴り続けていた。
139件だ。ジャーナリストは誰も(解任劇を)理解できていない。だから世
界中の知人から電話がくる」。それだけ言い、力強く愛車のアクセルを踏み込
んだ。

 前日9日はディアナ夫人が対応し「ここに主人はいない。(取材は)不可能」
と代弁した。確かに最後まで姿を見せなかったが、本当に在宅していなかっ
たのだろう。逃げも隠れもしないのが流儀。この日は、出先から戻ると再び
車を止めて2度目の質問に応じた。

 W杯2カ月前。このタイミングで監督の座から引きずり降ろされ、日本初
のW杯イヤー解任男になった。率直な気持ちを尋ねると「スカンダラス
(けしからん)」と言い、誰に対してか問われると「自分に対してだ」
と続けた。さらに食い下がると「セ・ラ・オント! セ・ラ・オント!
(恥だ、恥ずべきことだ)」。誇り高き指揮官は語気を強め、逆境に立つ自ら
を責め立てた。そして、かつて率いたアルジェリアからの就任要請があるとい
う一部報道には、あの、あきれたような表情を見せ「ノンノン」と小声で否定した。

後は日本の自宅や協会の監督室から荷物を引き上げる残務処理がある。来日日
時は「言えない」と明かさなかったが「すぐ日本に行く。そこで東京の全メディ
アを集め、数字(データ)を出して真実を明かす」といきなり宣戦布告した。

 序盤こそ「多く話せない」と言ったものの、もう止まらない。この後に自宅
インターホンを鳴らすと、何と3度目の取材に応じた。話し足りないのはいつ
ものことだ。半開きにした自宅ドアの前に仁王立ちした。

 「田嶋会長は何も説明していない。存在しない話をもって、いったいどう説明
すると言うのだ。私は日本で知名度があるから説明が必要だろう。協会との話は
もう終わりだが、サポーターには自らの口で話をしたい。これはウソだ、でっち
上げだ、陰謀だ。何人かの人間が裏で糸を引いていたようだ。憤慨だ。こんな終
わり方は受け入れられないし(解任理由とされた)コミュニケーションも3年
間にわたって存在していた。ただ、最後の合宿だけ皆さんは日本語、私はフラ
ンス語を話しただけなんだ」

 あの長い会見を思い起こさせる、ハリル劇場inリールだった。海外メディ
アで取りざたされる、契約のもつれによる訴訟には発展しないよう日本協会は
誠意ある対応を見せている。ただ、ハリルホジッチ氏の言い分にも耳を傾ける
必要はある。この男にスイッチが入ってしまった。再来日後の会見があるとす
れば、協会広報の制止がないエンドレスな放談が待っている。