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ハリル氏「嘘だ陰謀だ」日本サッカー協会に宣戦布告

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 ハリルホジッチ氏は“死んで”いなかった。おとなしく黙る男ではなかった。
桜咲く、フランス北部リールの自宅。快晴の正午すぎに車庫が開いた。
愛犬コスモを乗せた車を運転し、敷地外に出たところで日本人を見て窓ガラスを
下げた。

 −日本の日刊スポーツです。ぜひ、お話を聞かせてもらえませんか?

 「何も準備していないから…今ここでは話せない」

 そう第一声を発しながら取材者を思いやった。頑固だが、根は優しい。
就任から約3年。記者の直撃を避けたり逃げたことはない。

 「あなた(記者)の仕事は理解できる。昨日も私の電話は鳴り続けていた。
139件だ。ジャーナリストは誰も(解任劇を)理解できていない。
だから世界中の知人から電話がくる」。それだけ言い、力強く愛車のアクセルを
踏み込んだ。

 前日9日はディアナ夫人が対応し「ここに主人はいない。(取材は)不可能」
と代弁した。確かに最後まで姿を見せなかったが、本当に在宅していなかったの
だろう。逃げも隠れもしないのが流儀。この日は、出先から戻ると再び車を止め
て2度目の質問に応じた。

 W杯2カ月前。このタイミングで監督の座から引きずり降ろされ、日本初の
W杯イヤー解任男になった。率直な気持ちを尋ねると「スカンダラス
(けしからん)」と言い、誰に対してか問われると「自分に対してだ」
と続けた。さらに食い下がると「セ・ラ・オント! セ・ラ・オント!
(恥だ、恥ずべきことだ)」。誇り高き指揮官は語気を強め、逆境に立つ自らを
責め立てた。そして、かつて率いたアルジェリアからの就任要請があるという
一部報道には、あの、あきれたような表情を見せ「ノンノン」と小声で否定した。

 今後は日本の自宅や協会の監督室から荷物を引き上げる残務処理がある。
来日日時は「言えない」と明かさなかったが「すぐ日本に行く。そこで東京の
全メディアを集め、数字(データ)を出して真実を明かす」といきなり宣戦布
告した。

 序盤こそ「多く話せない」と言ったものの、もう止まらない。この後に自宅
インターホンを鳴らすと、何と3度目の取材に応じた。話し足りないのはいつ
ものことだ。半開きにした自宅ドアの前に仁王立ちした。

 「田嶋会長は何も説明していない。存在しない話をもって、いったいどう説
明すると言うのだ。私は日本で知名度があるから説明が必要だろう。協会との
話はもう終わりだが、サポーターには自らの口で話をしたい。これはウソだ、
でっち上げだ、陰謀だ。何人かの人間が裏で糸を引いていたようだ。憤慨だ。
こんな終わり方は受け入れられないし(解任理由とされた)コミュニケーション
も3年間にわたって存在していた。ただ、最後の合宿だけ皆さんは日本語、
私はフランス語を話しただけなんだ」

 あの長い会見を思い起こさせる、ハリル劇場inリールだった。海外メディア
で取りざたされる、契約のもつれによる訴訟には発展しないよう日本協会は誠意
ある対応を見せている。ただ、ハリルホジッチ氏の言い分にも耳を傾ける必要は
ある。この男にスイッチが入ってしまった。再来日後の会見があるとすれば、
協会広報の制止がないエンドレスな放談が待っている。