バラエティ番組などで“食べ物”を扱う企画の際、必ずといっていいほど目にする「この後スタッフが美味しく頂きました」というテロップ。

日本人の多くは、“食べ物を粗末にするとバチが当たる”という意識を共有している。テレビの大食い番組だったり、
食べ物を笑いの道具に使ったり、大量に食べ物を残すような場面があると、テレビ局にはクレームの電話が殺到する。

ダウンタウンの松本人志は以前『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、バラエティで食品を扱う話題が出た際、
「食べ物は食べる以外の使用方法もボクはあるんじゃないかと思っていて……」と切り出し、
「たとえば飴細工は飴ですけど、ひとつのアートになってるじゃないですか。
だから、食べ物もときには笑いの小道具として認めてもらえたら、こんなにありがたいことはないなと思うんですが、
なかなかこの主張は通らないですよね」と本音を語ったことがある。

松本は過去に『ダウンタウンのごっつええ感じ』(同)で「キャシィ塚本」という料理番組のコントを披露していた。
松本扮する料理講師のキャシィ塚本が突然おかしな言動を取りはじめ、「ドーン!」と奇声をあげながら何度も食べ物を投げつけ、
大暴れしたあげく最後に「二度と来ないわよ!」と激怒して立ち去る…という内容だったのだが、
当時の視聴者から「食べ物を粗末にするな!」などの苦情が殺到したという。

■定番の文句を表示は、テレビ側にとっては最大の免罪符

こうした食べ物絡みの批判をかわすべく、もしくは和らげるために表示されるようになったのが、「この後スタッフが美味しく頂きました」なのだ。
大量の食材を使用する企画があったとしても、このテロップを流しておけば、
視聴する側も「あんなにたくさんの食べ物、残ったらどうするんだろう」という心配をしないですむし、
制作側もすでに“説明済み”なので視聴者からのクレームに応える必要がなくなる。

しかし、本当にスタッフが食べたかどうかは視聴者にはわからない。ただの予防線・免罪符である可能性もあるのだ。視聴者がうるさいから、
とりあえず“出しておけばいい”ものになっているかもしれないのである。

■たけし過剰なテロップ表示に「しらける」 “予防線”が笑いを奪っている可能性も

一方、芸人側からのある種の問題提起ともとれる企画もあった。2015年9月13日放送の『オモクリ監督』(フジテレビ系)では、
よゐこの濱口優が監督・制作した「注釈が多すぎるテレビ番組」というVTRを発表。サービスエリアの絶品グルメや注目スポットを紹介するという、
よくありがちな番組なのだが、わずか5分弱の間に30回以上のテロップが入る。
「特別に許可を得て撮影しています」、「個人の意見です」というおなじみのものから、コント中に相方の頭を叩こうものなら
「本気で叩いているわけではありません」、「音は大きいですが見た目ほど痛くありません」などなど、過剰なまでの注釈が表示される。

見終わった千原ジュニアが、「(こういう未来が)来るかもわからないですね」と苦笑して見せると、
濱口も「来るでしょう。テレビがこんだけ弱くなってたら。ずっとお詫びばっかり入れて番組が進まなあかんくなるんじゃないかな」と憂慮した。
VTRを見ていたビートたけしさえも、「“食べ物はスタッフで食べた”とか、出たらシラケるよね。お笑い、本当にやんなっちゃうよね
。誰がこんなこと言うようになったんだろう」と嘆いたのだ。

かつては一時代を築いたフードファイト系の番組や、『リンカーン』(TBS系)の「巨大ペヤングを作る」といったような企画は、
あまり最近は見かけなくなった。昔のバラエティ番組では超定番だった“パイ投げ”企画にしても、一時期は「クリームは食用ではありません」などの
テロップが付けられたこともあったが、今やパイ投げ自体がほとんど絶滅状態。

 果たして、この「スタッフが美味しく頂きました」系のテロップは必要なのだろうか? たしかにもったいないことはわかるが、
撮影後にすぐ食べられる状況や環境にあるならともかく、ときには衛生面に問題がある場合もあるだろう。テロップが過剰だと視聴者をシラケさせるし、
テロップを入れないとクレームが怖くて放送できない…。テレビ局側のジレンマも理解できるが、とは言え事実、
「そんなこと、いちいちテロップ入れなくてもわかってるから大丈夫だよ」と笑って言える大人は、今の日本にいったいどれくらいいるのだろうか。

http://news.livedoor.com/topics/detail/14292967/