大ヒット曲「想い出がいっぱい」などで知られる元フォークデュオ「H2O」のメンバー、なかざわけんじさん(60)=熊本県大津町=が
作詞・作曲した「笑えるように今は泣こう」が熊本地震の被災者の心を癒やしている。2016年4月の地震直後に作られ、
ライブやコンサートで必ず歌われる。語りかけるような情感のこもった歌声は今も健在だ。【杉山恵一】

 なかざわさんは1980年、同じ長野県上田市出身の赤塩正樹さんと「H2O」としてデビュー。テレビアニメ「みゆき」のテーマ曲
「想い出がいっぱい」がシングルレコード40万枚を売り上げる大ヒットを記録するなど活躍したが、85年に解散した。
99年に再結成して01年から再びソロとして活動していたが、大津町で暮らす義母(86)と暮らしたいという妻の希望をかなえるため、
04年に東京から熊本へ移住。大津町を拠点に音楽活動を続けている。

 熊本地震の前震が起きた16年4月14日は大津町にいたが、自宅に大きな被害はなかった。余震に備えて水やラジオを枕元に置いて就寝していた同16日、
突き上げるような揺れに襲われた。本震だった。部屋に閉じ込められた義母を妻と助け出し、近くのコンビニエンスストアの駐車場に急いで車で避難した。

 同日、連絡がついた熊本県人吉市の知人から「こちらに避難を」と勧められた。スマートフォンからの緊急地震速報が不気味に鳴り響く中、
家財や本、ガラス片が散乱する自宅からギターを持ち出した。そして知人宅に避難していた10日間で曲と歌詞を練って完成したのが「笑えるように今は泣こう」だった。

 本震の日に駐車場で見た朝日に感じた希望を歌に込めた。「頑張れ」と背中を押す歌は多いが、
歌詞は「今は泣こう」という優しい言葉で結ばれる。被災してぼうぜんと立ちすくむしかなかった家族や友人たち。
「頑張れと言われても頑張りようがなかった」から素直に「今は泣こう」と呼びかけたという。

 昨年12月、大津町生涯学習センターに仮設住宅で暮らす被災者12人も招待して年末コンサートを開いた。
「笑えるように今は泣こう」が終わりを迎えた時、会場を埋めた聴衆約350人の半数ほどが涙をぬぐっているのがステージから見えた。
「日本人、特に男が泣くのは恥だと言われてきたが、喜怒哀楽こそが生きる原動力。悲しいことも含めて人生が素晴らしい」。なかざわさんは改めてそう感じている。


2/2(金) 13:30配信 毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180202-00000050-mai-soci
震災応援歌「笑えるように今は泣こう」を作ったなかざわさん=大津町で2017年12月27日午後5時10分、杉山恵一撮影
https://amd.c.yimg.jp/im_sigg6dYJd.WahQl0DQB4zACDGw---x900-y599-q90-exp3h-pril/amd/20180202-00000050-mai-000-3-view.jpg