大相撲初場所5日目(18日、両国国技館、観衆=1万816)4場所連続休場明けからの再起を目指す横綱稀勢の里(31)は、平幕嘉風(35)に押し倒され、3日連続金星配給で4敗目を喫した。同一横綱が2場所続けて3日連続で金星を配給するのは、昭和5年10月場所と6年春場所の宮城山以来2人目の屈辱だ。序盤5日目を終えて黒星が3つも先行。5場所連続休場の危機が迫るなか、自身は出場へ強いこだわりをみせている。

ただの一度も腰が定まらない。気持ちだけがはやる。上半身には過剰な力が入りすぎた。右胸に最後のひと押しを受けた稀勢の里は、尻から一回転。もんどり打って土俵下へ転落した。

3日目から3連敗。序盤5日を終えて1勝4敗。横綱では昭和28年3月場所で千代の山が初日に勝って4連敗して以来、65年ぶりの屈辱だ(不戦敗は除く)。支度部屋。横綱は厳しい表情を浮かべたまま、無言を通して引き揚げた。

師匠の田子ノ浦親方(41)=元幕内隆の鶴=は「本人が一番悔しいだろうし、苦しんでいる。一人で闘っているわけではないが、一人で背負い込んでしまっている」と思いやりつつ、休場を否定はしなかった。

立ち合いは左肩で当たった。嘉風の引き技に足をばたつかせ、腰が浮いたところを突かれて、もろ差しを許す。両腕を抱えて強引に寄って出たが、体を入れ替えられて万事休す。

3日連続平幕力士に屈し、金星を配給するのは昨年九州場所の自身(7〜9日目)以来だ。土俵下で審判長を務めた出羽海審判部長代理(50)=元幕内小城ノ花=は「強引に攻めて、なんとかしたい気持ちはあるようだけど…」。具体的な打開策を見いだせない、悩ましい表情を浮かべた。

「やると決めたら最後までやり抜く。(大事なことは)かわらず集中してやっていく」

この日、東京都内の田子ノ浦部屋での朝稽古後、稀勢の里は覚悟を漂わせて言い切った。休場する場合、師匠と協議して本人も納得ずくで決断することが慣例だ。だが、番付最高位の横綱が体面を捨て負けが込んでも出場に固執したら…。

横綱審議委員会(横審)の前委員長、守屋秀繁氏(千葉大名誉教授)は「(横審による)不成績を理由にした『休場勧告』の規則はない」。横審の内規第5条には「横綱として非常に不成績であり、その位に堪えられないと認めた場合」、激励、注意、引退勧告等をなす、とある。

初優勝と横綱昇進を決めた稀勢の里の昨年は、全休1度を含む4場所連続休場で幕を下ろした。故障は左上腕や左大胸筋に加え、左足首や腰にもおよび相撲勘にも影響を与えている。

昭和28年3月場所で4連敗した千代の山は6日目から休場した。序盤戦を1勝4敗でも横綱が土俵に上がるとなると、24年秋場所の前田山以来69年ぶり。前田山は5連敗を喫して休場した。

帰り際。「朝の言葉にかわりはないか」と問われた稀勢の里は、小さく「うん」。6日目は、今場所5連敗中の平幕千代大龍が相手。勝敗ではなく15日間を全うしようとする“哲学”は危うく、尊くもみえる。
ソース/YAHOO!ニュース(サンスポ)
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