日本相撲協会内で対立する貴乃花親方(45)=元横綱=と八角親方(54)=現日本相撲協会理事長、元横綱北勝海。双方にとって相反する顔を持っているのが、元協会顧問の小林慶彦氏(62)=平成28年1月解雇=だ。

貴乃花親方にとっては、尊敬する北の湖前理事長(平成27年11月死去、享年62)の側近であり、親しい関係にあった。一方、八角親方にとっては、顧問の肩書を利用して裏金を得るなどの噂が絶えない、信用ならない人物だった。小林氏の存在が両者の確執を深める要因でもあった。

八角親方ら協会執行部は小林氏の不正行為を調査していたが、昨年12月25日、日本相撲協会として小林氏を相手取り、裏金を受け取るなどの背任行為があったとして総額1億6500万円の損害賠償を求めて提訴した。小林氏は、パチンコメーカーから裏金を受け取ったり、両国国技館の改修工事をめぐって利益提供を求めたりしていたというのだ。

関係者によると、八角親方が小林氏と最初に会ったのは、平成23年6月だった。ある親方から「会ってもらいたい人がいる。北の湖親方に引き合わせるように頼まれたので」と言われ、小林氏を入れて3人で食事をしたという。

八角親方は最初から、どこの誰かわからない小林氏に不信感を持っていた。協会内でも同様の声があったが、北の湖前理事長が連れてきた人物だったので、誰も注意することはできなかった。小林氏は解雇されるまでの約4年間、協会の危機管理に関する業務などを取り仕切っていた。

八角親方がその不信感を色濃くする出来事があった。平成25年12月、小林氏の裏金疑惑を告発する手紙を受け取ったのだ。その手紙には「小林氏が力士のパチンコ台製作に関して、仲介業者から現金を受け取った」との内容が記されていた。

損害賠償請求訴訟の訴状によると、小林氏は平成24年11月ごろ、相撲協会顧問という立場を利用して、相撲協会とパチンコメーカーとの四股名等の使用に関わる名称等利用許諾契約の締結交渉に関連して、交渉相手だった広告企画会社S社のM社長から2回に分けて合計1700万円の裏金を受け取ったという。

当時S社には、元横綱朝青龍のマネジャーだったI氏が従業員として在籍していた。I氏が小林氏とM社長の間を取り持った。小林氏はM社長にこんなことを言っている。

「自分は昔は兵庫県警の暴力団担当の警察官をやっていたが、今は相撲協会の危機管理の仕事をしている」「北の湖親方の秘書もやっている」「相撲協会公認のパチンコ台を作ろうと考えている」

小林氏はM社長に対し、パチンコ台製作で使用する四股名などの名称利用の許諾を相撲協会が認めるように手配する旨を説明。M社長はパチンコ台の企画書を作成した。

すると小林氏は、このパチンコ台製作に反対しそうな協会理事がいることを示唆し、「裏金がいる」「2000万円ぐらい用意してくれ」などとカネを要求した。

その後、この裏金の授受は公になる。M氏から最初に500万円を受け取った場面が動画で撮影されており、ネット上に公開される騒ぎになったのだ。

小林氏と思われる男性が、ワイシャツにネクタイ姿で札束を受け取り、「これ、絶対にばれんようにしてくれる?」などと言いながら封筒に詰め込む様子が映っていた。この動画はM社長側が裏金を渡した証拠を残すために隠し撮りしたものだったといわれている。

結局M社長はパチンコ台製作を請け負うことができず、協力者だった別のライセンス会社社長と仲違いして金を脅し取ろうとし、恐喝容疑で平成27年7月に逮捕されている。

ソース/夕刊フジ
https://www.zakzak.co.jp/spo/news/180115/spo1801150003-n1.html