●貴ノ岩と貴乃花は、犯罪被害者等基本法及び第3期東京都犯罪被害者等支援計画により、「犯罪被害者等」に当たる。
犯罪被害者等は、犯罪被害者とその家族又は遺族と定義されたが、家族又は遺族という法律用語が存在せず、法は上記支援計画に委ねた。
そこで、家族は、民法の親族、つまり血縁や籍、国籍に囚われず、広く家族とみなせる者を含むとし、貴乃花や貴乃花部屋の人も犯罪被害者等と認められる。
そして、犯罪被害者等については、法で以下の通り定めている。

犯罪被害者等基本法第3条第1項
すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。

犯罪被害者等基本法第6条
国民は、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならない。

この施策はたくさんあるが、2次被害を防いだり、被害者の休暇制度、雇用面で不利益な処分を受けないこと、その救済措置などが盛り込まれている。

●また貴乃花は、現行の公益通報者保護法の公益通報者には当たらないものの、高松高裁平成20年9月30日判決では、内部告発をし、労働基準法上の労働者には当たらない警察官が、労働法の懲戒権濫用法理や公益通報者保護法の類推適用を受けるかが争点となった。
裁判所は一般論と断った上で、『内部告発を内容とするような特段の事情のある場合には,ことの性質上,上司が部下に対する指導監督権の行使にも慎重な配慮を要するものと解され,
部下が面会そのものや真偽の確認すら拒んでいるにもかかわらず,面会等を迫るなどすることは,指導監督権の行使の方法において違法の疑いが生じ得るものといえる。』
と判示し、内部告発者である雇用契約以外の人に対する不利益処分に対しても、懲戒権濫用法理や公益通報者保護法の類推適用を認めた。