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そもそも月あたり2280円のNHKの受信料(BSも含む)は「高すぎる」と思っているむきもあるだろう。放送法を建て前にしたNHKの徴収員に申込書をいつの間にか渡され、いつの間にか契約をしてしまっているのだから。

しかし、NHKとの契約を解除することは可能だ。ネットフリックスなどのネットテレビやYouTubeしか見なくなったという都内在住の西島涼氏(仮名・40代)は、'17年に契約を解除した。

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「合法的な方法は、ひとつだけです。受信設備(テレビかワンセグ付き携帯電話)をいったん捨てること。リサイクル券の半券か、業者の買い取り証明書をとっておく必要があります。

そのうえで、解約届を提出する。NHKに電話すれば、解約届が送られてきますから、それを返送すればいい。揉めないためにも書留で送るべきです」(西島氏)

ただし、今の放送法では、テレビのみならず、ワンセグチューナーがついている携帯電話やカーナビ、パソコンを1台でも持っていれば、契約解除ができない。

それらがもし自宅にあるのならば、機種変更や廃棄(いずれの場合も証明書を店でとる)の必要があるので要注意だ。NHKスタッフが現認のため自宅を訪れることもある。

5世帯に1世帯が未払い

だが、そもそも――。「あんまり大っぴらにはいえないが、受信料を払っていない」という人は、実は多い。NHKが公表している受信料の推定支払い率は78.2%だ。

受信契約対象となる世帯数の推定が4621万件のところ、支払いを行っている世帯は3612万件。実に5世帯に1世帯は、受信料の支払いを行っていないのである。

受信料について、放送法第64条はこう定める。

〈協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない〉

テレビを設置したなら、契約はしなければならないという。だがこの法律は罰則規定がない。

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一度も支払いをしたことがないという大阪府在住の佐々木洋平氏(仮名・68歳)の考えが典型的だ。

「NHKが家に来ても、絶対に支払わないよう妻にも子供にも言ってきた。初回の支払いが契約の開始だから、それ以降払わなければ、すべて滞納扱いになってしまう。

しかし、1回も払っていないのなら、契約もしておらず、払う必要がないっていうことだよね」

だが、'17年12月6日、最高裁によって出された判決は、佐々木氏の考えを否定するものだった。

〈設置者が受信契約の申し込みを承諾しない場合は、NHKが承諾の意思表示を命ずる判決を求め、判決の確定によって受信契約が成立する。それにより、受信設備設置の月以降の分の受信料債権が発生する〉

要するにこういうことだ。未契約の家にNHKの徴収員が来訪したとき、拒否や無視をすれば、NHKは「受信契約を成立させる」ための裁判を行う。その判決が出れば、「テレビを設置した月以降の受信料」を払わなければいけない――。

「あの表示」で訴えられる

ただし、それには条件がある。NHKが「テレビ設置の時期」を立証できることだ。

現実問題として、ある人が「はじめてテレビを設置した日」を正確にNHKが知ることは困難である。前出の山村氏は語る。

「NHKの契約書は必ず受信機設置日を書かねばならないのですが、それは本人の申告を元にします。もし契約をするハメになっても、自分の記憶をもとに書けばよい」

さらに言えば、そこを逆手にとった裏技もある。元NHK職員で葛飾区議の立花孝志氏が言う。

「録音しながら、NHKのスタッフにこう問えばいいんです。『正確な受信機の設置日について、記憶もないし記録もとれていません。受信機の設置日をどのようにすればいいですか』と。

NHKは『お客様のほうで書いていただくしかない』としか言わない。そこで『NHKが同意のうえで、今日の日付を書きますね。本当は今日じゃないけど、いいですね』と問えば、NHKは契約を断ります。放送法違反を恐れるからです」

そうはいっても、NHKは過去6年間で280人の未契約者を、次々と訴えている。だが「訴えられる人は共通している」と立花氏が言う。

「B-CASカード番号をNHKに伝えている人ですよ。逆にいうと、それ以外は未契約者を訴える術がないんです」

(続く)