12月6日、最高裁判所はNHKの受信料制度について「合憲」であるとの判断を下した。判決内容の詳細については新聞報道等に譲るとして、NHKの受信料収入は2015年度決算によれば6625億円、16年度決算によれば6769億円となっている。
庶民の間に好況感がない昨今、右肩上がりに増えていて羨ましい限りだが、気になることがある。



それは17年11月30日付「朝日新聞デジタル」記事『(教えて!NHK受信料:5)徴収の経費、どう抑える?』と題した記事に、次のような指摘があったからだ。
一部を抜粋して紹介する。



「14年9月。次年度からの3カ年経営計画を議論する経営委員会で、委員の一人が営業経費の高さに苦言を呈した。
17年度の受信料収入6889億円のうち、735億円。収入の1割超が契約や徴収の経費に消えることになる。
執行部は『訪問巡回に頼らざるを得ず、一定の経費がかかる』『公平負担のためにはやむを得ない』と理解を求めたが、経営委では『かけすぎ』との認識で一致したという」

 

NHK経営委の委員に批判された「営業経費」とは、NHKの受信契約と受信料の収納に関する経費のことであり、NHKが「地域スタッフ」と呼んでいる職員や、別法人に委託して行なっている「訪問巡回」にかかる経費のこと。
その経費が、費用対効果の点で大いに問題があるのでは――と思えてならないのだ。



17年12月6日付「日本経済新聞 電子版」記事『NHK受信料「合憲」 滞納・未契約どうなる?』によると、NHKが受信契約の対象とする約4600万世帯のうち、未契約が約900万世帯、契約済みの滞納が約100万世帯いるのだとされる。
この数字が事実だとすると、NHKはおよそ1000万世帯から受信料を取り損なっている計算になる。
現在のNHK受信料(地上デジタル放送)は、1年間でおよそ1万5000円ほどだ(月額税込み1260円、衛星放送まで含むと月額税込み2230円)。

 

一方、NHKの15年度決算によれば、「受信契約および受信料の収納」にかけている経費は734億円と、実に受信料収入の1割を超える額(11%)を注ぎ込んでいる。
そのうち、受信契約者への受信料請求や収納にかかる「収納・管理経費」がおよそ4割(287億円)で、残りの6割(446億円)が未契約や未収者への対策経費「制度維持経費」である。
つまり、受信料を滞納している100万世帯が本来払うべき年間約150億円(年1万5000円×100万世帯)の受信料を回収すべく、その額の3倍に当たる450億円ほどを毎年かけていることになる。


ちなみに、5年に1度実施されている総務省の「国勢調査」の経費は約670億円(15年度予算による)。
NHKはこれと遜色のない規模の調査を毎年繰り返しやっているようなものだ。

しかも、NHKが調べているのは「その世帯にテレビがあるかないか」と「受信料を払ってくれるか否か」だけである。
念のため、「訪問巡回」でほかにも調べていることがあるのかNHK広報局に訊ねたところ、「ない」とのことだった。




■「未契約900万世帯」という数字の正確度

 

この「受信契約および受信料の収納」に経費をかけすぎだとの批判に対し、「この経費には、未契約の約900万世帯を契約させるための費用も含まれている」との反論も、きっとあるだろう。
これらすべての世帯と契約することに成功すれば、毎年1350億円(年1万5000円×900万世帯)もの受信料が上積みされる計算だ。

しかも、滞納世帯の分と合わせれば年1500億円となり、450億円の経費はその3分の1以下にとどまる。
だから、社会通念上も許される範囲の経費だろう――といった類いの反論である。

では、この「未契約の約900万世帯」という数字はどれくらい正確な数字なのか。

17年1月1日現在の日本の全世帯数は、約5748万世帯。

そのうち、NHKが受信契約の対象としているのが約4600万世帯だとすると、国内の約1148万世帯がテレビを持っていないことになる。
NHKが「未契約」と呼ぶのは、この「テレビを持っていない世帯」ではなく、テレビはあるもののNHKと受信契約を結んでいない世帯に対してである。

http://biz-journal.jp/2017/12/post_21850.html
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