文盲アンチ 「君縄の脚本は何も考えてないご都合話ニダ!」


第37回日本SF大賞 選考経過 選評
ttp://sfwj.jp/awards/Nihon-SF-Taisho-Award/37/20170507033854.html

選評 日下三蔵

『君の名は。』も画面やセリフの情報量が多く、そのことが劇場に
何度も足を運ぶリピーターを増やしたと思われる。そして、おそらく
『君の名は。』を熱心に観た人の多くは、この作品がSFであると
いうことなど、考えてもいないのではないだろうか。それは、
いわゆる「SFの浸透と拡散」が極限まで達成された証でもある。

この作品はある一点を境に、これまで見えていた世界が様相を
一変させる。つまり、前半と後半の二部構成のようなストーリーに
なっているのだ。
当初、SFとしては後半部分の複雑な並行世界の処理に、何らかの
誤魔化しがあるように思い、人物のチャートを作って検証してみた。
広瀬正「『時の門』を開く」ほど複雑ではないにせよ、決して
単純とはいえないストーリーは、ひとつの時間線が消えているのを
除けば、かなり際どくすべてが繋がることが分かった。
そのチャートは作中で印象的に登場する組紐のようでもあり、
細部まで考え抜かれた作品であることは間違いない。

そうなると惜しいのは、前半部分の「映像による叙述トリック」を
成立させるために、重要な情報を作中から意図的に排除している点だ。
この部分がフェアに処理されていたら、ためらわずに
大賞に推せていたと思う。

もちろんひとつの作品としてSFなりミステリと
いった
ジャンルの文法に縛られる必要はまったく無いので、これが
無いものねだりであることは充分に承知しています。