11月19日、J2最終節。J1昇格プレーオフ進出を懸けた争いは熾烈を極めていた。名古屋グランパスとアビスパ福岡はすでに4位以内を確定させ、プレーオフ出場資格を得ていたが、5位、6位は僅差の争いで、徳島ヴォルティス(5位・勝点67)、東京ヴェルディ(6位・67)、松本山雅(7位・66)、ジェフ千葉(8位・65)の4チームが2枠を争う構図だった。

 東京V対徳島、松本対京都サンガ、千葉対横浜FC。最終節で5位、6位争いに関わるのはこの3試合だった。勝てば自動的にプレーオフ進出が決まる徳島、東京V、松本の3チームに対し、千葉だけは「他力」だった。勝利を収めても、この3チームのうち2チームが勝利すれば、あるいは、東京V対徳島が引き分ければ、勝ち点で届かない苦しい立場に置かれていた。

 すべて同じ時刻にキックオフされたこの3試合。終盤を迎えた段階で、東京V対徳島は1−1、松本対京都は0−1、そして千葉対横浜FCは1−1だった。5位と6位は徳島と東京Vで決まるのか。そんなムードが漂う中で事態は急変した。味の素スタジアムで行なわれていた東京V対徳島の88分、1−1の均衡が破れた。内田達也のゴールで東京Vがリードを奪ったのだ。

 1−1で推移していたフクダ電子アリーナの千葉対横浜FCが、俄然、面白くなった瞬間である。千葉はそれまで横浜FCを圧倒。試合を押しまくっていた。決定的なチャンスを何度も外していた。だが得点を奪っても、味スタの試合が1−1で終われば、6位には届かない。追って届かずの状況にあった。それが、1点決まれば6位=プレーオフ進出に一変したわけだ。

 そして、ロスタイムに突入した92分、千葉はCKを得る。清武功暉の蹴ったボールは、飛び込んだDF近藤直也にピタリと合った。そのヘディングシュートはGKの手をかすめながら、ゴールに吸い込まれていった。

 劇的なゴールとはこのことだ。最終節を前に8位だったチームが6位に滑り込んだ。それだけではない。千葉は、その10節前の32節終了時まで、22チーム中13位に低迷していたチームだった。35節終了時でも12位。千葉がそこから7連勝を飾り、プレーオフに出場することを予想した人は、どれほどいただろうか。

 きっかけとなったのは36節の岡山戦だった。千葉に詳しい記者によれば、そこから布陣を変更。4−3−3を4−2−3−1にしたことが奏功し、相手ボール時の対応が安定したという。それ以前は、圧倒的にボールを支配していながら、カウンターで失点を食らうパターンを繰り返していた。

 サッカーは面白い。けれどもそれが勝利に結びつかない。よく言えばユニークなチームだった。いいサッカーをしても勝たなければ意味がない。そうした勝利至上主義が蔓延(はびこ)る日本にあって、その能天気なサッカーは貴重な存在だった。

 そのサッカーを見る前から千葉は気になるチームだった。新たに就任した監督が、かつて欧州の現場でプレーする姿をよく見たフアン・エスナイデルだったからだ。

杉山茂樹 | スポーツライター
11/24(金) 9:00
https://news.yahoo.co.jp/byline/sugiyamashigeki/20171124-00078493/