●企業の決算リズムとのズレ。スポンサー確保への不安

シーズン移行には、選手のパフォーマンスや試合の質が下がり、ひいてはサッカー観戦の魅力を損ねていると指摘されている、酷暑の時期の試合を減らすことも目的のひとつとなっている。

Jリーグ側では原博実副理事長が窓口となるかたちで、日本プロサッカー選手会(JPFA、高橋秀人会長/ヴィッセル神戸)とシーズン移行に関して意見交換を行った。
JPFA側としてはシーズン移行よりも、天皇杯決勝が元日に行われることで、いっせいにオフに入れない点が懸念されたという。

5つの理由のうち2つ目は「育成の問題」となる。藤村特命担当部長が言う。

「Jリーグと日本サッカー界の将来的な発展を考えたときに一番大事なのは育成であり、その観点からすると、学校の年度と近い現状のシーズンのままのほうが、上手くいくのではないか」

3つ目は「移行に伴う経営上のリスク」となる。JFA側が示した通りに2022年から移行すれば、上半期に実質的な空白期間となる。前年からシーズンを継続させるのか、あるいは短期間の大会を創設するのか。
その間にリーグおよびクラブとして、収益を確保できるのかという問題が生じる。

さらには各クラブとスポンサーシップを結ぶ企業のほとんどが、年度末決算をとっている点とも密接に関係してくると藤村特命担当部長は続ける。

「いまのJリーグのシーズンが企業の決算のリズムと合っているという点が、スポンサーとの関係のうえでは大きなプラスになっている。そこが半年ずれてしまえば、収益確保の点で不安な要素になってくるという声が多く出されている」

●JFAの提案に理解は示すも、Jクラブは8割が反対寄り

4つ目は「会場手配の問題」となる。J3までを含めたJクラブのほとんどが、行政所有の公共施設を試合会場として使用している。
地域の陸上競技場として使用されているスタジアムも少なくなく、シーズンを移行した場合、行政年度をまたいで手配・確保することができるのかどうか。

昇降格とも関わってくるだけに、地域のスポーツ団体や学校との調整は決して簡単な作業ではないと藤村特命担当部長は指摘する。

「とりあえず先にJリーグで押さえたいというお願いを、地域との関係が上手くいっていればできるんでしょうけど。陸上競技場は場合によっては地域の学校の運動会にまでつながっている話なので、地域をあげてクラブに協力する関係性ができていなければ、使用調整のめどが立たないいのかなと」

最後の5つ目は「全Jクラブの意思」となる。Jリーグは全54クラブの実行委員に、シーズン移行に対するアンケート調査を実施。大半がJFAの提案に理解を示したうえで、藤村特命担当部長によれば「8割の方が反対よりの意見を寄せられた」という。

Jリーグ側では経営上のリスクや会場手配の問題などを、来月6日に開催されるJ3までを含めた合同実行委員会で再度議論するが、村井チェアマンは「もう(議論の)材料は出そろったという認識です」とも明言した。

JFAの田嶋会長は最終的にはJリーグの決定を尊重するというスタンスを取っている。さらに12月の理事会で現状維持もしくはシーズン移行のいずれに決まった場合でも、10年間はJリーグの開催シーズンに関する議論は行わないことも確認されている。

(取材・文:藤江直人)

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