●変則日程によって水を差されているJ1

次に(2)の「リーグ戦の終盤がより盛り上がる」に関しては、まさにいま現在が、変則日程によってJ1が水を差されている真っただ中となる。

2013シーズンから、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝が11月にホーム&アウェイ方式で、しかもともに土曜日に開催されるようになった。今年は4日にYBCルヴァンカップ決勝が入り、さらには国際Aマッチデーウイークも毎年設定されている。

佳境を迎えているJ1は必然的に、変則日程を余儀なくされる。本来は18日に第32節、26日に第33節をいっせいに開催するスケジュールは、浦和レッズがACL決勝に進出したことを受けて、レッズ絡みの2カードを分離開催することで調整している。

たとえば18日に2位の川崎フロンターレが敗れれば、すでに前倒しで行われた試合でレッズに勝利している鹿島アントラーズの連覇が決まっていた。試合のないクラブが優勝すれば、四半世紀を迎えたJ1で初めての事態だった。

翻ってシーズンを移行すれば、国際Aマッチデーウイークがない4月および5月がシーズンの佳境になる。所属クラブでの試合に集中できることで選手たちにかかる負担も軽減され、長い目で見れば日本代表の強化にも好影響を及ぼしてくる。

もっとも、藤村特命担当部長は「一理あると思う」とJFA側の提案を尊重しながらも、リーグ戦全体のプロモーションの観点から懸念が示されたと明かす。

「現状では集客の山場がゴールデンウイークといま時分の終盤戦と2つあるが、移行すると5月にまとまってしまうので、年間を通して見ればマイナスなのかなと。
4月にプロ野球が開幕して、メディアの露出がかなり野球押しになる時期に、リーグの終盤が当たることが得策かどうかというのもある」

一方でACLのスケジュールが現状のままだと、5月にはグループリーグ終盤戦とホーム&アウェイで行われる決勝トーナメント1回戦が入ってくる。
代表選手を多く擁する上位クラブにかかる負担は、たとえJリーグのシーズンを移行したとしても軽減されないことになる。

2020シーズンまでは、ACLは現状のままで開催される。ヨーロッパと同じシーズン制を採る中東勢は変更を希望しているが、UEFAチャンピオンズリーグとスケジュールが重複しないほうが、
マーケティング上でメリットがあるとアジア・サッカー連盟(AFC)はにらんでいるとされる。


●Jリーグ側が挙げる、シーズン移行の難易度が高い理由

最後の(3)の「降雪地域のスポーツ環境整備を進める」に関しては、理想として目指すところはJFAもJリーグも変わらない。ただ、現実としては厳しいと藤村特命担当部長は指摘する。

「シーズンを移行すると決めたら、降雪地域の自治体が試合会場やトレーニング施設にお金を出してくれるのかと言えば、実際に自治体や地域と向き合っているクラブの意見としては、おそらくそうはならない、なかなか厳しいのかなと」

Jリーグはさらに、シーズン移行に対して難易度が高いとする理由を5つ挙げている。まずは「リーグ戦の開催期間が短くなること」となる。

現状とシーズンを移行した場合のカレンダーを比較すると、後者はウインターブレークを設けているため、1月と2月のほとんどが使えない点は現状と変わらない。後者ではさらに、6月と7月がシーズンオフとなる。

単純計算でリーグ戦の開催期間が2ヶ月短くなるところを、12月と2月の開催時期をそれぞれ増やすことで1ヶ月にとどめた。要は現状よりもスケジュールはさらに過密になる。
当然ながら増やした分は降雪地域での開催は難しくなるため、当該クラブは冬期にアウェイ戦を連続させ、温暖な時期にホーム戦を連続させる日程を取らざるを得ない。

おりしも19日のJ2最終節では、モンテディオ山形のホーム、NDソフトスタジアム山形が試合途中から大雪に見舞われ、ハーフタイムには雪かきが行われ、オレンジ色のカラーボールも導入された。

「ファンやサポーターが来られるぎりぎりのタイミングでいま現在は開催されていて、これ以上深く、1週でも(12月の)奥に行けば、集客上ではほとんど現実感がないという話は降雪地域の複数のクラブから出ています」

実行委員会内で出された意見を明かした村井チェアマンは、ひとつのチームが連続してアウェイ戦を戦う日程は、ファンやサポーターの立場から見て決して好ましいことではないと指摘している。

「ファンやサポーターからすれば、隔週でクラブと触れ合うことでいいエンゲージメントができる。観戦者のいろいろな状況を鑑みると、ホーム戦とアウェイ戦がよいリズムで行われていくのがいいのではないか、という声が多くありました」

つづく