>>1の続き)

「向こうはプロリーグということですが、うちの選手はアマチュアで、会社から給料が出ていますから、ノーギャラです。それで日本野球連盟(JABA)からもOKが出ました。
シドニー球団からは車が提供され、試合前後には食事もありますし、会社からも海外出張費が出るので選手の負担はなかったです」

 ABLの台所事情は苦しい。ノーギャラでレベルの高い日本の社会人野球クラスの選手を獲得できるなら、願ったり叶ったりである。
社会人チーム側としても、オフシーズンに普段とは違う野球を体験させることは、選手の伸びしろを広げる意味で貴重な機会である。
実際には、初年度ということもあって、チームの主軸の派遣とはいかなかったが、シドニー球団の要請に基づいて派遣したバッテリーは口をそろえて今シーズンのプレーにプラスになったと振り返る。

■派遣事業は語学研修の一環

「向こうでは外角低めを引っ張ってフェンス越えするんですよね。日本ではまずない打球でした。あれを体験して、コントロールにより気を付けるようになりました」と語るのは、左腕投手の吉越亮人。
昨シーズンは不振で、当時28歳と年齢もあり、そろそろ「上がり(引退)」かとも言われたが、ABLでの武者修行により今シーズンはよみがえった。

 社業へのプラス面を語るのは捕手の山崎裕貴だ。彼は入社当時から、引退後は海外業務の志望をもっており、それもあって、ABLへの派遣事業を聞きつけ、監督に猛アピールした。
米田マネージャーも、この派遣はあくまで会社の研修の一環であると語る。

「やはり社業があっての野球部ですから。会社にとってなんの利益があるのかということも大事になってきます。語学研修という社員教育の一環という捉え方です。
わずか2カ月ほどなので、ビジネスレベルまでは難しいですが、やはり現地で体感するのは違うでしょうから。ウチはオーストラリアにも事業所があるので、プラスに働くと考えています」

■今オフも選手を派遣へ

 この派遣事業が軌道に乗れば、将来的には、オーストラリア人選手を契約社員扱いで受け入れ、練習のない日などに英語研修の講師をやってもらうというプランもある。

「いちど選手を送って、感じがわかったので、主力を送ることも考えています。JABAの方も乗り気で、他社さんにも呼び掛けているようです」

 状況はまだ流動的だが、Hondaはこのオフも選手を送る予定とのことだ。

 ABLもこの方向性を今後も続け、さらなるリーグの発展につなげる。来オフからではあるが、韓国リーグにも呼びかけ、1チーム丸ごと韓国人のチームを加える予定だ。
そうなると、リーグ戦を効率よく実施できるよう球団数を偶数にするため、もう1球団が必要となり、これに日本人チームを当てることも想定している。

 まだまだ克服すべき課題はあるが、プロ、独立リーグ、社会人野球というプロアマの境界がはっきりしている日本ではお目にかかることがないだろう混成軍が異国で「日韓戦」を戦うということもあるかもしれない。

<了>

阿佐智のプロフィール
世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、
『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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(続く)