■4−1−2−3システムは来年の本大会で通用するのか?

そもそも、現行の4−1−2−3システムはサッカー大国と戦ううえで適したフォーメーションなのか。私的な見解を述べれば、答は「ノー」だ。ニュージーランド戦とハイチ戦ではアンカーの両脇のスペースを突かれるケースが少なくなかった。世界的には「弱小」の部類に入るだろう彼らとの試合でさえ、そうした脆さを見せたのだから、改善・変更は不可欠だ。その意味で、11月の欧州遠征でどんなシステムを用いるかは興味深いところである。

 もっとも、ここから短期間で個の力が急激に伸びれば、4−1−2−3システムでロシア・ワールドカップを戦うことも可能だ。ただ、それはあくまで理想論。現実的には、粘り強く守ってカウンターという「弱者のサッカー」に徹する以外に本大会で躍進を遂げる手立てはないのではないか。

 モデルは、2010年の南アフリカ・ワールドカップでベスト16に勝ち進んだ日本代表だろう。「俺たちは弱い。恰好をつけている場合じゃない」(田中マルクス闘莉王)という現実を受け入れ、あえてベタ引きし、個々のハードワークをベースとしたサッカーでチャンスを窺った、あのスタイルこそ模範とすべきだ。

 もっとも、当時の日本代表にも闘莉王や中澤佑二といった“強烈な個”がいた。それに比べると、今のハリルジャパンは個性さえも足りない。監督の指示に従いすぎる傾向が強く、それがかえって個々のキャラクターを消してしまっている印象さえある。

 本田の言葉を今一度思い出すべきだ。「結局のところ、最後は個で試合を決する」ことを──。単なる組織ではなく、個も融合した集合体にならないと、ワールドカップへ明るい展望は開けない。

文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)