■かつて本田は主張していた、「最後は個で試合を決する」と。

話は前後するが、「個の力」に改めて言及すれば、本田圭佑は4年前にその重要性を説いていた。14年ブラジル・ワールドカップの出場を決めた翌日、「ワールドカップで優勝するために残り1年で何が必要か」というある記者の質問に対し、彼は「シンプルに言えば個」と答え、こう続けたのだ。

「昨日(のオーストラリア戦で)、川島(永嗣)選手が1対1でしっかりと守ったところをさらに高める。今野(泰幸)選手が(ティム・)ケイヒルに競り勝ったところをさらに勝てるように磨く。(長友)佑都と(香川)真司が左サイドで突破していたところの精度をさらに高めて、あれをブラジル相手にもできるようにする。ボランチのふたりが、どんなプレッシャーが来ても必ず攻撃陣にパスを供給する、そして守備ではしっかりコンパクトさを保ちながらボール奪取を繰り返すといったことを90分間やる。岡崎(慎司)選手や前田(遼一)選手が決めるべきところでしっかり決める。

 結局のところ、最後は個で試合を決することがほとんどなので。もちろん、日本の最大のストロングポイントはチームワークですが、そんなものは生まれ持った能力なので、どう自立した選手になって個を高められるか。

 自分が前に出るという気持ちを持って、集まっているのが代表選手。ここからの1年は短いですが、考え方によってはまだ1年あるという見方もできると思います。真司や佑都みたいに本当のトップクラブでやっている選手もいますし、ただ、そうじゃないリーグやクラブでやっている選手もやれることはある」

 こうして振り返ると、本田の言葉には妙な説得力がある。ニュージーランドやハイチに苦戦したのもプレーの精度が足りなかったからで、その意味で日本は4年前と同じく、個の力不足という課題を抱えていると言えるだろう。

 10月シリーズで計2ゴールを奪った倉田秋、ハイチ戦で代表初得点を決めた杉本健勇、1アシストをマークした車屋紳太郎など存在感を示す選手はいたが、いずれも個で圧倒したというレベルではなかった。今回招集された24人のうち22人が出場したにもかかわらず(不出場はGKの中村航輔とDFの植田直通)、大きな発見はなかった。むしろ募ったのは危機感だ。事実、ハイチ戦後のハリルホジッチ監督も厳しい言葉を並べている。

「色々な選手のクオリティや反応を見たかったから、この2試合で22選手を使った。主力が怪我をした時のために、若い選手にチャンスを与える必要があったんだ。だから、もちろんビッグマッチを期待していたわけじゃないが、それでも今日(ハイチ戦)の出来は受け入れられない。チャンスを与えたのだから、もっと良い部分を見せてほしかった。

 もちろん、6月まで色々なことがある。(本大会登録の)23人を絞るまでまだ時間はある。1試合だけで判断するつもりはない。ただ、もし今日のようなパフォーマンスが続けば、全員を入れ替える必要がある」

 結局のところ、キャプテンの長谷部誠(10月シリーズは未招集)がいなければ、このチームはまとまらないのか。果たして、それが健全な状態なのか。アジア予選ならまだしも、世界の強豪が集うワールドカップ本選でこのベテランMFに依存するのはどうなのか。今回の連戦を経て膨らむのは不安ばかりだった。